第四章 2月14日晴れ

一目惚れ

また新しいセンターでの訪問営業活動がスタートした。

営業活動は営業の人数も増え、複数ヶ所で同時に行うようになっていた。

僕が配属されたのは隣市にあって、配達女性スタッフの出入りが少なく、表現するなら平和なセンターだった。


和気藹々とした雰囲気で仕事がしやすそうだなと思った。

そこに彼女は居た。


少し茶色がかった首までのショートカットで、顔は南明奈にそっくりだった。

ディズニーキャラクターが描かれたライトグレーのパーカーを着ている。

ひと目見てかわいい人だなと思い、しばらく見惚れていた。


彼女はセンターでもかなりの年下で、年配の女性センターマネージャーにもかわいがられていた。

彼女は小さな男の子を隣接する託児所に預けると、慌てて配達へ出かけて行った。


配達女性スタッフの荷物には乳酸菌飲料が入っているので冬場でも商品を冷やす必要があり、朝一番の仕事は配達女性スタッフが荷物に詰める氷を袋詰めする作業から。

保冷剤や冷蔵庫に氷詰めのストックもあったが、だいたいはベテランさん専用だった。

彼女はお届けに出発する時間が遅かったので、一緒になって氷を詰めて手渡した。

毎日、彼女の配達に出掛ける準備を話しながら手伝った。

僕と彼女は11歳年の差があることを知った。


14時を過ぎると、お届けが終了して15時にはほとんどの配達女性スタッフは帰って行く。

彼女が次の日の準備をしている間、まだ4歳程の彼女の息子くんはセンターの中をウロウロしてベテランさんから飲み物やお菓子をもらっていた。

たまに僕は遊んであげることもあって、彼女の息子くんは僕に懐いていった。


センターの外で彼女の息子くんと遊んでいると舌足らずはかわいい声で「いっしょにあそびいこ」と僕に言った。

「行こうね」僕は息子くんの両脇に両手を添えて、僕の顔の位置まで持ち上げた。

息子くんは両手を広げて、僕に喜んだ笑顔を見せた。


そこに帰り支度を終えた彼女が息子くんを迎えに来る。

息子くんは彼女に抱き上げられると「いっしょにおでかけする」と彼女に告げた。


その5日後に3人で動物園に行く約束をした。

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