あなたにサラダ
彼女は自転車の籠や後ろの荷台にたくさんのお届け商品を乗せる。
そのまま立ち漕ぎでお届けに向かった。
ライトブラウンの長い髪をうなじより少し高い位置で左右に束ね、赤い眼鏡をかけた奇麗な顔立ち。
シン・エヴァンゲリオンのマリにそっくりな女性だった。
彼女にはまだ小さな息子くんが一人いた。
僕の名前と同じ漢字一文字の名前だった。
彼女は僕より12歳年下。
一緒にカラオケに行けば、歌いながらソファの上で歌っていた。
スタイルの良い彼女は手足も長く、踊る姿がとてもかわいかった。
彼女はドリカムが好きで、ドリカムを歌うときは踊らずに大事そうに歌っていた。
彼女が好きな歌、あなたにサラダを歌う時には、最後の「ありがとう」のところで両手でマイクを持ち僕に顔を寄せて歌うのが定番だった。
彼女の一人息子はいつしか僕をパパと呼んだ。
僕もそれからは息子くんの名前を呼ぶときの、くん付けを止めた。
男の子を肩車して、3人で歩く姿は誰から見ても幸せな家族に見えただろう。
彼女は僕の過去の事情を知ると、別れた妻との2人の息子に会う事を許してくれた。
ただ、別れた奥さんとは会わないでねと言う彼女が愛しかった。
僕たちはそれぞれの家を出て同棲する事を決めた。
初めての同棲生活。
一緒に住む場所は、彼女の母親の住むマンションのすぐ近く。
すぐ近くというより1軒となりのコーポの2階だった。
彼女の母親は離婚して彼氏とマンションに住んでいた。
レンタカーで軽トラックを借りて、二人の荷物を運びこんだ。
引っ越しには僕の友達や、彼女の友達も手伝ってくれたので朝から夕方までのレンタカーを借りている時間内に全て済ませることができた。
部屋は3DK。
リビングには彼女がドリカムのポスター、僕はジャケ買いしたお気に入りのCDをディスプレイした。
リビング横の襖で区切られた和室には彼女が持ち込んだダブルベッド。
ダイニングキッチン横の部屋はとりあえずの荷物置き場になった。
下の階は学習塾として利用されていたので、夜には騒音を気にしなくて良さそうだった。
こうして僕たちの同棲生活がスタートした。
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