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※今回の話は道徳的に反する内容を含みます。
事務員だった彼女は仕事が良くできた。
黒髪を縦ロールにし、大きな瞳と落ち着いた印象のメイクが良く似合う女性。
スタイルと着こなしが良く、同志社大学卒の彼女は、他の女性スタッフとは一線を画す存在感だった。
近寄りがたい存在だった彼女も、一度話すととても気さくでよく笑うことがわかった。
営業がもらって来た仕事の費用や納期を彼女がまとめたのちに、製作側でのデザインを行う僕に伝え、完成したデータや印刷見本を受け取る。
それが彼女の仕事だった。
担当営業は仕事ができるタイプとは言えない。
無能ともいえた担当営業のカバーを僕と彼女で行ううちに、信頼感とまた他の感情も生まれてきた。
彼女は結婚していたが旦那との間に子供は居なく、どちらかの原因で子供を授かることができないようだった。
売り上げ的にも大きな仕事を成し遂げた時、チームで打ち上げを行った。
酔いがまわり居酒屋の外で、風に当たっている彼女の様子を見に行った僕は、彼女に気になっていると伝えた。
彼女は小さくうなずくと「私もね」と言った。
それから仕事帰りに食事に行くようになり、会う約束が増えて恋人同士のようになっていった。
旦那が昼勤の週は仕事帰りから夕飯時まで会い、夜勤の週は夕方から夜遅くまで会った。
職場でも給湯スペースで隠れてキスをした。
彼女の身体は彫刻のように美しかったが、セックスは旦那に悪いからと彼女に禁止されていた。
セックスしない代わりに、僕のモノを咥えて快感を与えてくれた。
僕はそれに応じるように、中指や中指と薬指の両方を使って彼女に快感を与えた。
ある冬の日、ホテルの部屋に入ると」エアコンが壊れているので、電気ヒーターをお使いください」と案内がエントランスの壁に貼ってあった。
仕方なく僕たちはベッドの横に置かれた大きめの電気ヒーターの前で裸になった。
電気ヒーターの発する暖かなオレンジ色に照らされた彼女の彫刻のような身体は、美しいラインが協調されて僕を興奮させた。
ぼんやりとオレンジ色に浮かび上がるホテルの部屋の情景。
普段よりも昂揚している僕と彼女。
ベッドの上で横になる彼女の身体すべてに舌を這わる。
やわらかな膨らみと小さな突起、適度な筋肉を包む張りのある肌と窪み、細くふわっとした毛で包まれたピンク色の割れ目。
僕は彼女の両膝を立たせると、その間に膝をついて、赤く膨らんだモノを彼女の陰部にこすりつける。
そこにある突起を中心に上下に動かす。
膣の入り口に押し当てると、彼女は少しだけ腰をくねらせた。
亀頭が少しだけ彼女の中に侵入する。
「やっぱりダメ」そう言って彼女は膝をピッタリと閉じてしまう。
その動きで僕は後ろに倒れそうになり、両手をつきながら「いいよ」と言った。
その後はお互いの手や口を使って快感を与えあった。
季節が変わり、家のすぐ近くの公園に何本も植えてある桜は少しつぼみを付け、ニュースでは九州方面の開花宣言が伝えられていた。
彼女に呼ばれて、職場近くの本屋にある大きなスペースの駐車場で待ち合わせた。
「やっぱり罪悪感もあって、会うのは止めにしよう」そう彼女は言った。
芯の強い彼女の事だからよく考えて決めたことだし、僕が嫌だと言っても無駄だろうとわかったから、僕はただ「そうなんだね」としか言えなかった。
彼女は一枚のCDをバッグから取り出すと、僕の車のオーディオに入れる。
「言えないけど、私の本当の気持ち。でも、ごめんね」
車から久保田利伸のMissingが流れる。
言葉にできるなら少しはましさ
互いの胸の中は手に取れるほどなのに
歌が流れて僕たちは手をつないだ。
ときめくだけの恋は何度もあるけれど
こんなに切ないのはきっと初めてなのさ
助手席の彼女を抱き寄せる。
彼女は切なさを残して、別れを告げた。
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