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おんぶの章の時に働いていたデザイン会社で知り合った同年の友達とは、関係が続いていて、友達の家によく遊びに行く事が多くなっていた。
友達は以前とは違いモッズファッションに身を包み、ジャズを聴くようになっていた。
友達の家は1階でカウンターと1席だけの小さな居酒屋を営んでいた。
親が出かけて居るというので、カウンターに座りながらソルトピーナッツとコーラを口に運びながら話をしていた。
友達が誰かを呼ぼうと言って3人程に電話をかける。
15分くらいして一人の女性が店に入ってくると友達と楽し気に挨拶をした。
彼女は黒髪のショートカットで身体の線が細くてスタイルがいいことがわかった。
丸くて大きな目に細いピンクのフレームの丸い眼鏡が印象的でとにかく元気な女性。
彼女とは数分話しただけで意気投合した。
バニラアイスが乗ったクリームソーダの話で盛り上がっていると「彼女になろっかな」と彼女が言うので、「そうだね」と答えた。
彼女はいつも笑っていた。
目も口も大きな彼女は吉本新喜劇が大好きで、いつも大きな表情と声で笑うから僕もつられて笑ってしまう。
彼女に出会うちょっと前に僕は安いコンデジカメラを買った。
彼女のEcupの胸と細い腰はいつも僕を夢中にさせた。
ある日、ホテルに行って2回セックスをしてそれぞれが1回ずつ果てたあとで、彼女に今度写真を撮っていいか尋ねた。
隣の市にあるよく利用するホテルのへや。
眼鏡を外したらよく見えなくなるから恥ずかしくないかもと言って、眼鏡を外した彼女はベッドの上に座ってうつむいている。
「こっち向いて」
僕の呼びかけに彼女はまっすぐにカメラのレンズを見つめる。
はっきりとした二重から目じりに向けて伸びるアイラインが透明で綺麗な瞳を際立たせた。
静かな部屋に電子的なシャッター音。
彼女の顔の好きな角度を探しながら数回シャッターを切る。
カメラを置いて花柄のシャツのボタンを上から2つ、いや3つ開ける。
丸い曲線を描く谷間とネイビーに花の刺繍が入ったブラが少しだけ見えた。
僕はまた数枚シャッターを切る。
下着になってとお願いすると彼女はシャツとスカートを脱いで、上下ネイビーの下着姿になった。
シフォンケーキのようなうっすらと白い肌はベッド脇の照明でオレンジとのグラデーションになっていた。
そのあとは何も身に着けていない彼女の丸みや突起、しなやかな毛の集まりなどの彼女を形作るすべてにピントをあわせシャッターを切った。
僕はベッド横に配置されたスツールにカメラを置いて、「綺麗だった」と彼女に伝えた後でベッドの上の彼女を抱き寄せてキスをした。
それから数回はホテルデートの度に彼女の裸をデジタルデータにした。
ただセックスの最中には写真を撮らないでというのが、彼女の出した条件だった。
彼女は人生をとても楽しんでいるように僕には見えた。
その笑顔はまわりの誰もを笑顔にさせる力を持っているかのようで、僕はずっと一緒にいたいと思っていた。
そんな彼女とも別れの時が来た。
ふたりで泣きながら、生まれ変わったら今度は一緒になろうと誓いあって最後の日を迎えた。
彼女と一緒に過ごせる期間は、きっと神様が最初から決められていたのだと思う。
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