裏切り

同級生は同棲していた彼氏と別れて、実家に戻っていた。


僕はある有名な乳酸菌飲料の営業として働くことになった。

営業とは言っても販売地域を開拓するため、一般家庭に訪問し商品サンプルを無料配布した後、数日か一週間後に再び訪問して一か月の試し飲用を進める、そんな仕事だった。


同級生は話しを聞いてもどうということは無く、彼氏と別れた寂しさもあってか僕を求めた。

そうして僕らは付き合うことになった。


彼女はキッチンで料理を作ってくれて、ほとんど毎日を一緒に過ごした。

夜だけ実家に帰る、半同棲のような感覚だった。

小6の時の印象と違い、大人びた彼女はセックスも渇望的だった。


彼女はミニチュアダックスを飼っていて、ドッグランやドッグカフェによく行った。

その時には決まって彼女の車で移動。

慣れない助手席は最初は居心地が悪かったが、それも次第に慣れた。


旅行好きだった彼女とは車で良く出掛けた。

東京、御殿場、軽井沢、伊豆、名古屋。

旅行には彼女の犬も常に同行した。


宿泊ホテルはペット可の場所を選んだ。

ホテルの部屋の中、ミニチュアダックスが走り回る中のベッドの上でセックスをして、貸し切り露天風呂でもセックスをした。


仕事の方も順調だった。

若い奥様やおばあちゃんがほとんどの営業相手だったので、子ども好きでおばあちゃん子だった僕には警戒心を解いてくれて契約をもらうことができた。


半年後、社外の販売会社に出向してそこで販売営業活動を行うことになった。

そこでは営業に関するレクチャーや配達女性スタッフの育成を叩き込まれる。

各地から出向されてきた営業は10人ほどで、それぞれ担当エリアの販売契約の獲得がノルマとして課せられた。

指導係として本部の方から男女一組の本社スタッフが来ていた。


出向先での活動は多少厳しかったものの、獲得ノルマは達成することができた。

しかし全体的にはまだ未達成のエリアがあり、予定よりも一ヶ月延長された。

なんとしてもエリア全ての達成を目指すため、本部スタッフを営業活動に加わった。


僕は本部の女性スタッフとチームを組むこととなり、毎日一緒に活動を進めた。

共に苦労を乗り越えたふたりは、信頼し合いやがてお互いを求めるようになる。


活動もなんとか最終日を迎え、配達女性スタッフも含めた全員での打ち上げ。

帰りの僕の車の助手席には本部の女性スタッフが座っていた。

その夜はお互いを求めあっていた。


車を1時間程走らせ、僕の部屋でセックスをした。

攻撃的な色黒で筋肉質の締まった身体に反して、恥ずかしそうな表情が僕を過剰に興奮させた。


朝方になり、僕は駅まで送っていった。

一晩だけ身体を求めあった女性スタッフは新幹線の始発に乗って、東京へ帰っていった。


その日の昼過ぎに突然彼女が部屋にやってきた。

昨日いちにちずっと連絡が取れなかったと怒っている。

活動最終日とその後は女性スタッフと過ごした夜で、彼女からのメールや着信を無視していた。


昨日の全てを彼女に話すと、彼女は僕の肩や腕をこぶしで数回殴り、部屋から出て行った。

すぐに彼女に電話をしたが「現在、おかけになった電話番号は...」と着信拒否になったことを僕に解らせるアナウンスが流れた。


そうして僕はワンルームの割に家賃も高くて、彼女の思い出のしみついた部屋から、郊外のワンルームに引っ越すことにした。


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