捲土重来
実のところ妻の両親は妻の居場所を知っていた。
僕にも両親にも嘘をついていた。
息子たちがこのままでは心に大きな傷を残すと妻の両親に伝えると、あっさりと妻に連絡をとった。
和室にあった檜の祭壇は、妻の友達に勧誘されて入信していた新興宗教のものだった。
妻は家を出て、その友達の家に間借りして暮らしていた。
妻はとても几帳面な性格で、僕が「洗い物なんて溜めておいてもいい」、「掃除は週末にすればいい」と言っても毎日、育児と家事を両立させた。
少しづつストレスが溜まって、友達に誘われた新興宗教に入信したらしい。
僕が家を出ていく、離婚の話しを進める、家は長男の所有にする。
そんな条件で妻は家に帰ることになり、僕はひとりで暮らす部屋を探した。
家から車で15分程度の4階建てマンションの3階。
南向きの大きな窓とクローゼット、曇り止め機能付きのシャンプードレッサー洗面台とウォッシュレットトイレが入居の決め手となった。
カーディーラーはまた同じ事になるかもしれないからと、転職することが母親からの条件。
離婚後も息子たちとは会えるが親権は妻の方に。
僕はいくつかを失い、重い鎖をはめられてどん底から這い上がることになった。
こちらからの条件は妻が新興宗教から抜けること、息子たちに会えること。
それだけだった。
ダンゴムシのように丸まって身を守っていても、そのままではお腹が減って死んでしまう。
だからずっと丸まってはいられない。
妻のため込んだストレスなのか、黙って入信していた新興宗教なのか、それとも車の中で息子が拾ったシュシュなのか離婚の原因は色々あったと思うが、僕はシュシュを落としていった同級生に、ひとこと言ってやろうと決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます