幕間
僕の左側にある大きな窓から差し込む光は、半分水の入ったブランデーグラスを輝かせ、欅で出来たテーブルに光の筋が映しだされる。
今の僕は7畳のワンルームでひとり暮らしをしている。
希望と挫折を抱えてここへ引っ越してきた。
nico and...で買ったお気に入りのラグの上にあぐらをかいて、過去にばあちゃんが使っていた和裁用の机をリメイクした机上でキーを打っている。
ハリウッドの大作映画で言えば、このあたりでエピソード1を終わらせるだろう。
1,800円払って見に来た観客にとっては嫌なやり方だ。
次の展開を気にさせながら延々と知らない名前が下から上へと上がるだけのエンドロールを見せられる。
人生に幕間は無いが、文章には必要だろう。
昔、ネットで見た画像で海外のトイレの壁に書かれた落書きがあった。
はじまりはいつも怖くて不安だ。
終わりはいつも切ないか悲しい。
だけどその中間がとても重要なんだ。
そう書いてあった。
どんなことでも始まりと終わりはだいたい同じ。
その間をどう過ごしたかで変わってくる。
僕はひとりっこだ。
両親は共働きをしていたので、小3の頃から家の鍵を持たされていた。
学校から帰って友達と遊ぶ日が多かったが、たまに約束のない日は生活音のない家でひとりだった。
豆柴を飼っていたので、庭の犬小屋に一緒に入って時間を過ごすこともあった。
孤独で寂しかった。
だから誰かと一緒に過ごす時間はとても大切だ。
それぞれのキッカケで出会い。
別れが来る。
付き合っている時は別れを意識していないから、精一杯の愛を注ぐ。
愛したいわけじゃない、愛されたいから愛を注いだ。
ひとりで居たくない。
望むことはただそれだけなんだ。
お気に入りのスニーカーで色々な場所へ行って、歩いた分の靴底が減っていく。
斜めにすり減った靴底は戻ることはなく、それでいつかは履けなくなってしまう。
だから、そのスニーカーを履いて歩いた場所や道を覚えておきたい。
だから、文章として記憶を残しておきたいんだ。
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