おんぶ
デザイン会社には簡易的な印刷を業務とする部署があった。
彼女はその部署で働いていて、長い黒髪が印象的な大人びて色気のある僕よりも2つ年上の女性。
僕の所属するデザイン部門とは離れた部署だったので接点はあまりなかった。
いつもの同僚との飲み会。
彼女は酔うと男性に甘えるタイプ。
店を出ると歩けないと言って、おんぶをせがんだ。
だいたいターゲットになるのは先輩の男性社員ふたりのどちらか。
帰り道をおんぶされて運ばれていく。
ある日の飲み会で、僕は彼女と壁際の隣同士になった。
年上で大人びた彼女の飲み会の話題はもっぱら下ネタが多かった。
下ネタでも性的な方の話。
彼女が少し年配の同僚にセックスが上手そうだなとからかわれる。
上手くあしらいながらビールを飲み干して、空いたグラスにビールを注ぐように僕へ促す。
「セックスうまそうだよね。試してみようかな。」
グラスにビールを注ぐ僕に向かって彼女が言う。
僕はビールを注ぎ終わると「いいですよ」と答えた。
その日のおんぶ指名は僕だった。
それから彼女からの誘いのたびにホテルに行くようになった。
彼女にとっては彼氏ではなくただのセフレだったかもしれない。
僕は彼女との関係が同僚にバレるのを恐れて、彼女とセックスだけの関係で会わないことを告げた。
次の飲み会からのおんぶ指名は、僕と同じ頃に入社した同い年の同僚になった。
彼とは作業席が隣だったことと性格がよく合っていたので、入社してすぐ友達になった。
友達が戸惑いながらも上機嫌だった。
翌日、その彼女と付き合うことになったと嬉しそうに僕に報告してきた。
3ヶ月経った頃、友達から彼女と別れたと告げられる。
その週、会社が終わって外に出ると彼女が待っていた。
近くの公園まで歩きながら、僕とのセックスの方が気持ちよかったから忘れられなくて別れたと言われた。
その後の数回は友達に少しの優越感を感じながらホテルでセックスした。
ある日、何も知らない友達からやっぱり彼女のことが諦めきれない事を相談される。
僕は罪悪感を感じて、再び彼女との関係を終わらせることを決めた。
それから他のデザイン会社へ転職した。
市内の情報誌を発行する広告代理店のデザイン部署へ。
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