号泣
男女の関係になったばかりの、まだ幼い恋人同士はただひたすらに身体を求めあう。
僕の部屋でも、彼女の家の二階にある彼女の部屋でも。
駅の線路脇でも、別荘地のコテージの二段ベッドでも。
夜でも昼でも。
僕の部屋で抱き合った後、電車に乗って実家に洗濯物を持って帰ることもあった。
彼女が騎乗位のまま果てて僕に覆いかぶさったままキスをしていたから、電車に乗った時でも彼女の胸の重みがまだ僕の胸部に残っていた。
彼女には女友達がたくさんいた。
性格が良くて誰にでも愛想のいい彼女は、学校の中でも目立つ存在だった。
でも今は僕が独占している。
ある日、彼女が落ち込んでいるようだったので理由を聞いてみると、女友達と関係上手くいっていないという事だった。
僕とのデートに時間を使い、女友達からの遊びの誘いを断っていたかららしい。
それから一か月しない内に彼女から別れを切り出された。
女友達ともっと学生生活を楽しむ時間が欲しいから別れたいと。
隠れてキスをした学校の非常階段での別れ話。
彼女に会えない日が続く。
キレイに咲いていた花が突然枯れたような、世界から太陽が消えてしまったような。
そんな絶望の日々。
ある夜、21時頃だった。
彼女との関係を元に戻したくて彼女の家に自転車を走らせた。
呼び鈴を押すと彼女の母親が出てきた。
玄関に招かれたが、中には入れさせてもらえないと言う。
彼女に会わせて欲しいと頼み込むも叶わない。
僕は玄関で泣きながら、彼女の名前を呼んだ。
帰ってくれと母親に言われたが、ただひたすらに会わせて欲しいと懇願した。
たぶん近所の体裁を気にしてだろうか一階の和室に通されて、もう遅いからここで寝るようにと言われ布団を敷かれた。
彼女が来るのを期待したが、彼女が来ることは無かった。
泣きつかれた僕は眠りについていた。
いったい何時のことだったか覚えていないが、急に聞き覚えのある声に起こされた。
そこに居たのは親父だった。
きっと彼女の親が連絡したのだろう。
その夜はそのまま親父の車で実家に帰る事になった。
車で2時間の帰り道、僕はただ泣くことしかできなかった。
あの時に僕を怒らないでいてくれた親父の温かい気持ちをずっと忘れない。
その後、ひとり暮らしを止めて地元に帰ることになった。
彼女とはその後は友人として卒業制作の作品を作り上げた。
そして地元で就職先を探すことになる。
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