バス停

小学生の頃、僕は放送委員会に入っていた。

あの頃にしてはかなり珍しく、給食の時間に各教室のテレビで学校放送を行っていて番組の制作を自分たちでしていた。

球技大会や花壇の花が咲きましたとか、そんな学校内のニュースなどの番組制作。

放送室には番組制作のための大きなビデオカメラと編集機材の全てが揃っていた。


そんな影響もあって高校を卒業後、放送関係の仕事に就くために放送・芸術関係の専門学校に進学することに。


地元から1時間ほど電車に乗って通学する、その学校で彼女と出会った。

授業の一環として8mm映画製作があり、その製作チームの中に彼女はいた。


誰に聞いても小動物に例えられるような小柄な容姿。

いつも笑顔。

そんな女の子だ。


1年の夏頃に付き合うようになったが、どうやって付き合うようになったのか全然覚えていない。

講義の時はいつも隣に座り、学校が終わった後は一緒に街をウロウロと歩いた。

夕方には彼女をバス停で見送り、僕は地下鉄から電車に乗り換えて地元に帰る。


そんな日がしばらく続いていたが、若い恋人同士の帰り時間は次第に遅くなり、かなり陽が落ちかけてから帰るようになった。


ある日、バス停から少し離れた公園のベンチ。

まわりに人気のないのを確認して、僕は隣に座る彼女の右手を初めて握る。

彼女が僕の肩に右のこめかみを乗せる。

僕の左の頬には彼女のやわらかい髪の感触。

しばらく無言のままでそうしていた。

僕は彼女の名前を呼んだ。

彼女が少し上を向き、僕は顔の向きを変えて彼女の顔を見る。

彼女が目を閉じた。

そしてはじめてのキスをした。


それから手を繋いだまま何度もキスをした。


その後の日々は同じような繰り返し。


僕は彼女ともっとふたりきりでいたいと思い、ひとり暮らしを決意する。




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