赤いマフラー
今はLINEやSNSのDMで簡単に連絡をとれるが、僕が中学生の頃は家の固定電話くらいしかなかった。
今になって思い還すと付き合うとなってから、どうやって連絡をとっていたのかまったく思い出せない。
思い出せないことは正直に創作せず、忘れたと書こう。
彼女の家は自転車で15分くらいの場所にあった。
4階建てのマンションに住んでいて、マンションの駐車場で合って話をした。
当然、話した内容は覚えていない。
初めて一緒に出掛けることになり、駅前のファンシー系の雑貨店に行って、お互いに気になる雑貨について話しながら店内を歩いた。
そのころ流行っていたバットマンのピンズを2つ買って、ひとつを彼女にあげた。
次のデートは映画だった。
彼女が見たいといったクリスマスものの恋愛映画。
山下達郎のクリスマス・イブが主題歌。
当然だけど緊張で内容はまったく覚えていない。
僕はクリスマス一緒に過ごしたいと思った。
まだ手も繋いでない、できればファーストキスをしたい。
彼女とクリスマスに会う約束をして、僕はクリスマスへの期待でいっぱいだった。
クリスマスの一週間程前、僕が廊下を歩いていると学校のヤンキーグループ5人に
声をかけられて囲まれた。
それから彼女と付き合っていることを執拗に聞かれ、威圧された。
たぶんヤンキーグループのひとりが彼女のことを好きだったんだろう。
クリスマスの一日前、急に彼女が会って話したいと言ってきたので、僕はどうやって彼女とファーストキスしようか、それだけを何度もイメトレした。
だけど実際はかなり期待外れな内容の話だった。
やっぱり付き合えない。
受験に集中したい。
そんな話の内容だった。
僕は何も言えなかった。
ただ彼女の言葉を受け入れることしか選択肢はなかった。
自転車に乗って振り返る僕に彼女は小さく手を振った。
赤いマフラーがとても似合っていた。
僕の初恋はそうして終わった。
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