第六話 自棄(やけ)石に水 1/3


 結論から言うと、雨ヶ咲 流海あまがさき るみは孤立するようになった。

 最初は他の生徒にもスライムに見えるのかと疑ったけど、どうもそういう訳では無いらしい。


「だって一緒に買い食いとかできないんだもん。つまんないじゃん」


 女の友情なんてそんなものか。いや、最初から『友達検定』に落ちたんだから友情もクソも無いのか。



******************



 さて、放課後だ。

 そして、今日は一月の末日だ。

 さらに、最高気温は一桁台だ。

 また、外は雨である。

 だが、天気予報では終日晴れだった筈だ。

 たしかに、朝は雨が降っていなかった。

 なのに、午後から急に降り出した。

 ちなみに、ウチの学校は置き傘を禁止している。

 ただ、個人ロッカーは有る。

 なので、大体はこういう場合の為に皆傘を入れておく。

 その上で、俺はと言うと大体行く時に雨が降っている日に傘を持って行って、帰りに晴れてると、そのままロッカーに忘れる。

 だから、常にロッカーに傘が二~三本置いてあるわけで。

 

 で……だ。


 学校の玄関に雨ヶ咲 流海が立っている。

 あと数歩前に歩けば雨が当たる位置で、立って空を見上げている。

 傘は持っていない。

 他の生徒は彼女なんて見えていないかのように、普通に傘を差して帰っていく。

 厚手のコートを着てはいるが、防水を目的とした物じゃないことは一目で分かる。

 

 …………うん。


 まあ、だからこういう場合、無理のない範囲でできる奴ができる事をすれば良いだけの話であって、たまたま困ってる人が雨ヶ咲 流海で、それをどうにかできるのが今、金護 大鎁かなもり だいやしか居なさそう、というだけであって、 誰だってそーするし、俺もそーする。ただそれだけの話だ。


「使うか?」

「……!!」


 話しかけてきた相手が誰か分かった途端、表情が分からなくても分かりやすすぎる位に、身体を引いて動揺する雨ヶ咲。

 どうしろってんだ、百メートル先から歌いながら近づいた方が良かったのか?


「いや、でも、かね、もり、君は? どうするの?」

「かなもり、な。金護 大鎁かなもり だいや。傘二本有るの見えねーの?」

「あ……」


 まさか、相合傘に誘われたと思ったのか? これが(いろんな意味で)ファーストコンタクトだぞ?

 あと名前知ってたのか、微妙に間違えてるが。名簿の漢字見て勘違いしてたのか?


「あ……ありがとう」


 おずおずと傘を受け取る雨ヶ咲。

 はい、終了。俺の役目終わり。とっとと帰って、ss400の12mmに5径フライスして、インチゴブのネジ入れる作業手伝わないとな。


「あの……」


 正面玄関を出ていこうとする俺の後ろから雨音に掻き消えそうな声が聞こえてくる。

 ここまでやっといて聞こえない振りをするのは、まあ、無いわな。ため息を抑えつつ振り向いて答える。


「何?」

「その……一緒に、帰らない?」

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