第四話 渇いた石と、飢えた水
誰かが倒れている
目の前で倒れている
僕の手が血で染まっている
それは僕がやった事
だからこれは僕の罪だ
***************
俺の住んでいる
「お前、冬になっても氷食ってんのな」
「ん? ああ、これか」
昼休みの教室。土田の前で保冷瓶から氷を一つ取り出して口に放り込み、直ぐに噛み砕いていく。
「顎を鍛えてんだよ。教室は暑いし」
「へえ。まあ良いけどさ」
各教室にはヒーターが備えられていて、窓際が暑いのは本当だけど、氷を食べる理由は別だ。その理由は一言で言うと……分からない。
いつからか水をそのまま飲むと血の味がするようになった。ジュースとかで味が付いていても駄目で、下手をすると吐いてしまう。病院にも何度も行ったが異常無しと言われた。
かと言って水分を摂らない訳にいかないので、専ら氷を噛み砕くか、食べ物に水を湿らせて食べる。おかげで家で出る御飯は何時もギリギリお粥な程度に柔らかい。
説明が面倒だし、気を使われたくないので他人に聞かれたら顎を鍛えていると誤魔化してるが。
親父なんかは「この味が分からないで大人になるとは、全くもって不幸だな」と笑いながらビールを煽るが、別に気にしちゃいない。
そんな俺だからと言う訳じゃないが、妙な事に気が付いた。
その割に水筒を三本は持ち歩いている。中身がそれぞれ違うようで、一つは赤、一つは緑、一つは白い。野菜ジュースか何かか?
「お前いっつも雨ヶ咲の事見てるよな」
土田の一言で我に返る。無駄とは思うが惚けてみる。
「そう見えるか? 気のせいだろ」
「まあ、こんな田舎には似つかわしくない都会オーラ出してるし、可愛いもんな」
可愛いのか……。何故か口惜しい。何が? 分からない。
「でもアイツは止めといた方が良いぞ。女子の間で妙な噂が出始めてる」
「噂? どんな?」
それは気になる。次の総理大臣が誰になるかの次位には気になる。というかなんでお前が女子間の噂を逐一把握できているのかが今一番気になる。
「何も食べないで、赤いジュースばっかり飲んでるから吸血鬼じゃないかって」
「……中世の魔女狩り場か、ここは」
まあ俺だってアイツがスライムに見えてなければ、たかが転校生の女子、何を飲んでようが全く気にしてなかったけど。
今も数人の、色々な意味で社交的な女子達が、雨ヶ咲の周りで和気あいあいとしているが、今後はどうなるか……。
「後は、復讐に来たとか」
「復習? 何を?」
「あいつ、昔この町に住んでて、ある日(崖から)滑って落とされたんだとか」
「へえ……」
こんな田舎に受験戦争なんてあったか? 三クラスしか無いんだぞ。
「それを恨んでいて、落とした奴に復讐しに来たとか言ってる奴居たわ」
「いや、それは本人の責任だろ。大体今は上ってるんだから良いだろ?(進級)」
「そう、それが問題なんだよ。(怪我を)治していざ戻ってきたものの、元凶(犯人)は何処を探しても見当たらない。もうこうなったら手当たり次第復讐してやる! って準備してるんじゃないかってな。まあ言ってる奴は妄想&虚言癖で有名な
「なるほど……」
つまり、同じ受験の失敗をする生徒を一人でも減らすため、教師の道を目指しているのか。
「それは、まあ、なんと言うか……立派だな」
「何が!?」
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