第二話 どちらかと言えばプリン派


 スライムと言っても顔と突起だけの最弱敵じゃない。まあ、あれはあれでこっちの手駒にして育成次第で序盤は戦力になるが、そんなのは今どうでもいい。

 ノベルゲームでよくある、登場人物の見た目に読者の想像の余地を残す手法。あんな感じだ。立体感は比べようも無いが。

 一番近い見た目を例えるならゼリーか。表面がテカっていて、かなり濃い青だか緑だかの色をしているが、ギリギリ透けて向こう側が見える。

 そして、中に何か銀色のキラキラしたものが浮いていて、ゆっくりと動いている。水を入れたボウルにプラスチック片を入れてかき混ぜるとあんな感じになるか?

 辛うじて人型を保ってはいるものの、表情は色を塗る前のフィギアのように分からない。せいぜい目や鼻の位置ぐらいだ。

 髪の色も体と全く同じなので皮膚と髪の違いが分からない。というか髪なのか?頭の上と横と後ろが少し盛り上がってる様にしか見えない。


「おい、金護かなもり、何そんな舐め回すように見てるんだよ。そんなに気になるのか?」


 身を乗り出して観察している様を、隣の土田がからかってくる。

 気になるどころの話じゃないが、今俺が見えている光景をそのまま説明した所で、無言で四階の窓から突き落とされて二話で連載が終わってしまう。


「いや、どっかで会った気がしたんだけど……」

「へえ、どこで?」

「いや、まあ、勘違いだ」


 そうやって誤魔化している内に、転校生は用意された椅子に座った。ここで俺の隣に……というテンプレ展開は無く(そもそも俺の席は一番左後ろで、右が土田だ)、間に一人挟んだ右斜め前の席に座った。

 ……どうやらショートカット(と言っていいのか?)のようだ。制服の背中部分に軟体が伸びて垂れ下がっている感じは無い。


「調子が悪いのかもしれない」


 主に眼が。いや、この場合脳か?


「そうなのか? だったら保健室行けよ。新しく入った保健の先生美人らしいぜ」

「興味無いよ」

「それに、なんでも精神科の分野で博士号取ったとか。なんかよく分かんないけどすげ〜よな。博士号って」

「……」


 ……はかせごうって何だよ。

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