2話 ~砦の外の宝物~

『壱 環琉の想い』


ここは、天音あめね砦にある抹茶カフェ小琥路こころ

長女の小琥路こころちゃんが、やっとオープンさせた抹茶カフェの奥の部屋。


「皆の衆、ただいま~」

隊商を組んで砦の外に出ていた朱里あかりお姉ちゃんが、お土産を大量に持って帰ってきた。


「朱里ちゃん、お帰り」

うちは朱里ちゃんの頬にチュって、お迎えした。


なんか、しあわせ♪


次女の朱里ちゃんは、革パンに革ジャンの世紀末スタイルだ。

腰にはショットガンを装備しているヤバいお姉ちゃんだ。


「この子、また拾ってきたよ♪」

と紹介された娘は、お里だ!

「なんだお里かよ!」

「ただいま~あほ娘!」

「えっ砦の外に出たの?」

「わらわは迷子になって、気づいたら砦の外にいたのじゃ」


砦は壁で囲まれてるから、迷子になったからって、外に出ることはないのだが!


「異次元移動でもしたのか?」

「いじけていどう?何を言ってるのだ、この娘っ子は、世界の中心にいる、わらわがいじける訳なかろう~」


お里に、アホな子を見る目で見られてるけど、「お前の方がアホやで」って意味を込めて、お里の頭を撫でると、お里は何故か嬉しそうに微笑んだ。


お前は犬か?



朱里ちゃんと一緒の夕食は、やっぱ楽しい。

残念ながら小琥路こころちゃんは、抹茶カフェの店番だ。


それでも楽しいひと時の後に、うちは作業を再開させた。

さて、うちの正体を明かそう。うちは、動画配信者(予定)なのだ。


しかし、カタストロフィーにより文明は崩壊してしまい、天音あまね砦の外は、無法地帯だ。当然、ネット環境も崩壊したし、色んな常識や価値観も変わってしまった。


それでもわらわは、違う!うちは諦めない!


かちゃかちゃかちゃ♪とんっ♪


繋がれ・・・・・まじで・・・えっまじで!


「おおおおおおおお繋がった~」

ネットが繋がった!

カタストロフィーにより失われたかと思われたネットが繋がった!


「朱里ちゃん見て!ネットが繋がったんだよ!」

「おお凄いじゃん!!!!!!」



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『弐 お里の想い』




環琉めぐるに「わらわは触るな!」と厳命されて、近づくことが出来なかった謎の機械がある!


『わらわ』はわらわであって、わらわはわらわではない。

わらわの名前はお里!乱世に永遠の癒しをもたらす者!


何度言ったら解るのじゃ?あのあほ娘は!

しかし、ふふふふ、あのあほ娘は、どこかに行ったみたいだ。


ほう~不思議な機械じゃ。このへんを押していたな。


かちゃ♪

うぃぃぃぃぃぃ♪


「何じゃ!」

予想外に機械の隣にある機械が動き出した!

ん?!機械から紙が出てきた!


妖術の類だとは思うが、わらわとは違う種類の妖術だろう。

あのあほ娘も、やるな!


なんじゃこれは?地図か?


文字は読めぬが、雰囲気から宝物の地図に違いない。

ふふふふ。


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『参 朱里の想い』



「朱里の姉御~宝物の地図発見なんだけど」

「なになに?」

「なんて書いてあるんのじゃ?」


お里から見せられた紙には、地図と住所と電話番号が書いてあった。

今となっては繋がる事のない電話だ。

カタストロフィー前のメモなのだろう。


紙は環琉めぐるのパソコンのプリンターの紙だろう。

元は、急いで書かれたのか、メモの様な感じだ。


住所は砦の外の住所だ。

地図の庭辺りに♡と書かれていて、宝の地図を思わせるには十分だ。


「なになに?どうしたの?」

環琉が店の手伝いから戻ってきた。


「プリンターから出てきた」

「って勝手に触らないでって、言ったでしょう!わらわね!」

「わらわはわらわじゃなく、お里じゃ!」


「まあ、まあ」

あたしはお里の頭を撫でながら、環琉に地図を見せた。


「見て、宝の地図ぽいよ」

「これは・・・きっと、どこかにカタストロフィー前のデータが残っていて、それを拾ったのかも知れない」


お里は謎の踊りを踊りながら、あたしの周りを廻った。

「宝物~きっと可愛い着物に違いない~わらわ可愛い着物が欲しいと思っていたのじゃ~きっとこれはわらわへの贈り物じゃ~」


「馬鹿ね~お宝って言ったら、宝石に決まってるじゃない!

そして、宝石の指輪やネックレスが似合う女と言ったら、うちしかいない」

「あほ娘には似合わないし」

「似合うわよ!」


賑やかな2人だ。

さて地図の住所の今の位置は大体解る。

そんなに遠くはない。


「行って見ようかな。この住所だと砦の外かな」

「砦の外に?!」


環琉は驚いた。環琉は砦の外を相当恐れている。

砦内の人は大体そうだが。


「みたいだね」

「隊商を組んで砦の外に?」

「1人でよ」

「危ないよ!」

「あたしにとって砦の外は日常よ。それに武器もあるし」

「でも」

「姉貴には言わないでね。心配するし」

「うちだって心配するよ」



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『四 小琥路の想い』



無謀な朱里には驚愕しかない!


「どうして隊商も組まずに、1人で砦の外に出て行ったりしたのよ!」

「まあ、まあ、宝も持って来たことだし、落ち着いて姉貴♪」

「もう命が一番大切なのよ!」

「解ってるって」


朱里が持ってきた運搬用の一輪車の上には、布の覆いが被されていた。

環琉とお里は、キラキラと目を輝かせながら、その宝物?をじっと見つめていた。


「それじゃあ皆の衆!お宝の御開帳!」

朱里が覆いを外すと、金庫が姿を現した。


「おおおお!」

環琉&お里は、歓声を上げ、環琉は

「開けられるの?」

と問いた。


「じゃーん、金庫の鍵開け機ー」

「おおおお!」

環琉&お里は大喜びだが、朱里が手慣れた手つきで金庫の鍵を開けられることに、朱里の日頃の行いが見えた様な気がした。でも今は問うまい。


「何が出るかな?じゃーん!」

金庫の中にはたくさんの札束と、いくつかの書類が入っていた。


「・・・(3姉妹)」


環琉は札束を放り投げると、

「旧時代の紙切れじゃねーか!こんなのお尻もふけねーよ!」

カタストロフィー前だったら、数億は行っていた量だ。


「はぁ~(3姉妹)」


カタストロフィー前に欲しかった。



つづく

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