天音砦の抹茶カフェ
五木史人
始まりの章
1話 ~瓶の中のしあわせ~
『壱
わたしは
それでも、やっと抹茶カフェ小琥路のオープンに漕ぎ着け、今はお店として大切な時期。相変わらず客は少ないが、少しづつ増えてはいる。
カランコロン♪
呼び鈴が鳴り、次女の
「ただいま~」
「お帰り~
砦を出て隊商を組んで、商いをしている
さらに腰にはショットガンとリボルバーが装備されていた。
世紀末ファッションで、男気いっぱいだ。
「はいお土産、姉貴には【開店&準備中の看板】」
センスのある看板を取りだした。
「お洒落ー!きっとカタストロフィー前に作られたモノだよね!」
「でしょうね。センスあるでしょう」
文明崩壊後、そう言ったセンスのあるデザインは、まず作られない。
どたどたどた♪
「
と『好き好き』した後、
「誰この娘?」
「この子は、砦の外で拾ってきた」
「今時着物って、前前時代かよ」
「わらわは、サトイモのお里!乱世に永遠の癒しをもたらす者」
お里は、ポーズを決めた。
「それカッコいいか?」
「間違った、わらわは、お前以外に永遠の癒しをもたらす者」
「変な子!」
気は良い子なんだけど。
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『弐
「おはよう」
2階から1階の店の控室に降りると、お里が、
「おはようございまする」
と挨拶をした。
砦の外で見つけた時は、衰弱していたが、一晩眠ると生気を取り戻したみたいで、良かった。
「ここの居心地は最高でする!
悪党ばかりの外とは違って、極楽浄土でする。
ここには本当のしあわせが、あるのです」
カタストロフィーは、文明世界を破壊してしまったのだ。
「お里ちゃん、抹茶モンブランを冷蔵庫に入れとくからおやつに食べてね」
と店の方から小琥路の声が聞こえた。
「抹茶モンブラン?」
その美味しそうな単語に、お里の目が輝いた。
そりゃそうだろう砦の外は世紀末だ。
「【おやつ】って何?しあわせそうな響きがするけど」
お里は【おやつ】も知らないらしい。なんか泣ける。
「【おやつ】ってのはね、3時に食べるお菓子だよ」
「3時?」
時計の針は、まだ午後1時を過ぎたばかりだ。
「そう3時まで待てるね?」
「は~い」
可愛いお返事だ。環琉とは大違いだ。
どうしたらあんな我儘に育つのだろう?
あたしは
久しぶりに食べる
愛情が、ほとばしっているのだ。
ゴーンゴーン♪
大きな柱時計が午後2時を知らせた。
「まだ?」
「ま~だ」
午後2時の時点では、抹茶モンブランは存在していた。
「ふふふ、あと一時♪お昼寝でもしときまする♪」
そう言ってお里は、お昼寝を始め、あたしも2階の武器庫に引き上げた。
ゴーンゴーン♪
大きな柱時計が午後3時を知らせた後、階下から叫び声が聞こえた。
「おやつがない!」
その時のあたしには、この後の事件など想いもしなかった。
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『参
永遠の旅に
お里
お里が出て行った?
その置手紙は冷蔵庫の中にあった。
抹茶モンブランがあった場所だ!
うちが抹茶モンブランを、食べてしまったせいだ!
「おはよう~皆の衆」
ともう午後5時だが、
「お里がいなくなった」
うちはその危機を朱里ちゃんに告げた。さらに、
「
小琥路ちゃんも、泣きそうな顔をしながら控えの部屋に入って来た。
「な~に、その位で」
砦の外で世紀末を生きてる
「今迄順調に増えてたのに、1人も来ないなんて」
「うちがお里のおやつ食べてしまったから、出て行っちゃたんだよ。
どうしよう、また砦の外に出てたら、うちのせいだ!」
心配するうちと
「皆の衆、座敷童って知ってる?」
「妖怪の類?」
「まあそんなものね。座敷童が家にいるとその家に繁栄をもたらし、逆に怒らせると没落させる」
「うちが抹茶モンブラン食べて怒らせたから、客が1人も来なくなった?」
「あの子今時着物を着てたし『お里は、乱世に癒しをもたらす者』って、それっぽいこと言ってた」
「だったらうけるよね~」
朱里ちゃんは笑ったが、小琥路ちゃんの落ち込んだ。
「
予想外の落ち込みむ、うちと
「2人とも冗談だよ。ほら笑って、笑う門には福来るだよ。ほら!」
うちと
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『四 お里(おさと)の想い』
砦を巡る旅は楽しかった。みんなしあわせよの~
カランコロン♪
「ただいま」
一斉に、わらわに視線が向けられた?
わらわが愛おしいのは、知ってる。
いきなり
「わらわ、お帰り」
『わらわ』はわらわであって、わらわはわらわではない。
わらわの名前はお里!乱世に永遠の癒しをもたらす者!
「ごめんね、うちが抹茶モンブラン食べたばっかりに、
でもね、このお店はお姉ちゃんの大切なお店なの!
ここだけは没落させないで!」
何言ってる?この娘っ子は?
変な娘っ子だとは思っていたが。
姉たちも、愛おしいわらわを注視しているが、それより
「どして看板準備中?」
「えっ?」
「ん?」
おかしな姉妹だ。
つづく
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