愉快なメンバーを紹介するぜ!

「さねちーのことは置いといて……。こっちの背の小さい子は、りっくん。一つ下の後輩。知らないだろうけど、一応プロのサッカー選手だよ」

「えっ、本当ですか、どこ所属ですか?」

杜若 立夏とじゃく りっか。まだ控えだけど、名古屋のチームにいるよ。ちなみに、俺達の中でプロになったのは立夏だけ」

 何で、先輩はプロにならなかったんですか。

 つい、口に出してしまいそうになった疑問を、押し戻す。

「この女の人はマネージャー。撫子のアネゴ。料理がクソ不味いから気を付けて」

「真葛撫子。秋人の従姉弟。……あ、今は結婚して逢坂 撫子おうさか なでしこになっているのか。もう子どもが二人いて……」

 結婚という単語を口にした時、一瞬だけ先生の顔が曇ったように見えた。

「春ちゃんの初恋の人なんだよぉ。アネゴはそのことに気付かないまま、お嫁に行っちゃったけど」

「えっ」

「ちょ、生徒に何バラしてんだ! 昔の話だよ、昔のっ!」

 そういうことか。だから、さっき表情が……って、それって、まだ吹っ切れてないってことか? 気になるけど、俺が聞くのもなあ……。

「……この人が、こよみん先輩」|

 明るい笑顔が印象的な背の高い人。

日輪 暦ひのわ こよみ。サッカー部を作ろうって言った人で、キャプテン。それと……」

 先生の顔が暗くなる。まだ何かあるのか。

「アネゴの元カレ」

 この人と結婚しなかったんだな、撫子さん。確かに、それは言い出しにくいよな。雪兎先輩はあっさり言ったけど。内部事情をあっさりと言ってしまったけど。

「それと、さねちーの好きな人」

「って、ええええええぇぇぇっ⁉ 男同士ですよ⁉」

「だって、さねちー、ゲイだもん」

「えええええええぇぇぇ、え、ちょ、それって……」

「BL漫画とかアニメとか好きだよ」

 これが今日一番の驚きでした。

 こんな複雑な内部事情を抱えて、全国優勝をしたのか。それはそれで、スゴいけど。というか、雪兎先輩、口軽過ぎ。

「変な誤解を生むようなことを言うな。好きっていっても、ラブじゃなくてライクの方だよ。尊敬もしてたから、リスペクトも入ってるけど」

「はあ、そうなんですか……」

それなら良かった、のだろうか。

「ちぇー、その方が面白いのになぁ。……んじゃ、続き。この外国人さんは、フレッドT。サッカー部の顧問でALTの先生だったの。日本語ペラペラで、日本文化、特にサムライに憧れて来日したって言ってた」

「フレッド・T・アイシクル。Tはミドルネーム。今は京都に住んでて、剣道を学んでるよ。いいな~、京都。俺も行きたいなあ」

 ……何というか、個性的だな。ものすごく。

「あの、他の人達は?」

 写真の中には他の選手や応援団らしき生徒、校長を始めとする教師達も一緒に写っている。話を聞いていけば、もっと個性的な人がいるかもしれない。

「え~っと、助っ人とサポーターの皆さんと教師陣」

「え、それだけ?」

 何だ、その、その他大勢的な感じは。

「あ、助っ人っていうのは……。俺と雪兎と秋人と立夏と暦さん以外の人達のことだよ。固定メンバーは俺達五人だけで、他は入れ替え自由。ずっと同じメンバーだと対策立てられるから、半数以上を毎回入れ替えて戦術も毎回変えてっていう作戦。秋人が考えたんだ」

「軍師さねちー、だもんね。今は経営戦略を考えてるし」

 ……半数以上が入れ替え自由って。よくそれで、全国優勝できたもんだと思った。

「でも、けっこう無茶な作戦じゃないですか、それ。チームワークとか無くないですか?」

「まあ、俺も最初はそう思ったんだけどな。……でも、全国優勝は出来た。秋人がよく言ってたんだけど『やってやれないことは無い』ってことなのかなって思ってる」

「ま、僕のお陰なんだけどね。さねちーも、そこはちゃんと認めてたし」

「天才雪兎と、軍師秋人に頼りっぱなしだったからな」

「うん、頼られっぱなしだった~」

 実際に話を聞いてみると、印象が変わった。何かこう、あっさりしているというか……。

 「気付いたら全国優勝しちゃってました」的な感じ。

「あ、そうだ。さねちーに電話しよ。突撃、テレフォンショッキング♪」

 何をどうしてそう思ったのかは分からないが、雪兎先輩が唐突にそう言った。

 ポケットからケータイを取り出して、電話をかける。

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