第155話
シーサーペントの薄く青が混じったような白い体で見えているのはおそらく全長の半分程度であるだろうに、それでも立った人間が見上げるほどに大きい。
以前退治した巨樹魔獣と高さだけなら同じくらいになるのではないだろうか。もちろんあちらは幅もあったものだから、それも含めての大きさということならこのシーサーペントの方がまだ小さいと言えるのかもしれんが。
「ここは吾輩に任せて、下がっているがいい」
安心させようと先ほども言ったようなことを再び、今度は殊更に力強く告げると、ナディアが海から離れ、それを見て漁師らもそろそろと離れていった。
そもそもこのシーサーペントは海でしか活動しない魔獣であるということのようだ。海面から顔を出してはいるが、こちらに上がってこようという素振りはないのだから。
この巨大なにょろにょろとした魔獣は“悪さ”しにくるだけと言っていたし、あの口ぶりでは漁師たちを殺しまわっているようなことはないのだろう。であれば、説得してここを離れてもらえればそれが一番良いのだが……。
「そなた、住処を変える気はないか? 勝手を言っているのは承知の上だが……海は広いであろう」
キュォォォォッ!
語り掛けてみると、シーサーペントは天を向いて鳴き声を上げた。その口内には鋭い歯が並んでいるのが見えた。あの歯で噛みつきにこられると、中々に痛そうではあるが、この態度はさてどういうことであろうな?
『あの子は交渉ができるほどの知性はないで』
「ふむ」
魔獣の態度を推し測っていた吾輩であったが、隣にいた水精霊から中々に無情な宣告がされた。
『漁師さんらは頭が良いっちゅうとったけど、それはまあ、ウミヘビにしてはってことやな』
「そ、そうか」
のんびりした口調なのに、水精霊は言うことが身も蓋もないな。
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