第152話
勢力間の争いに介入してどちらかに肩入れするようなつもりはないのだが……。しかし吾輩としては今後もこの漁村マーリアには、来たいと思っているのが事実だ。
誰しも胃と舌の欲求には逆らえない、ということであるな。
だから吾輩は、「頼みたいこと」があるらしい老いた漁師の言葉を素直に待った。
「あの魔獣……シーサーペントは本当に頭が良い。だから倒すまではいかずとも、陸の者にも対抗策はあると示せば去るはずだ」
ふむ、にょろにょろとした魔獣とはシーサーペントと呼ばれているらしい。それに賢いからこそ付け込んできているという風なこともさっき言っていた記憶があるな。
「吾輩は手を貸すと先ほど言ったぞ。つまり追い払えば良いのだな?」
「ああ、それができるなら……いや、そうしてくれるなら、奴は近づいてこなくなるだろう」
話はついた。……と思ったのだが、三人組のうち残りの二人は少し不満そうだ。
「余所者に、それもこんなちんちくりんの手を借りるのか?」
「俺らで仕留めよう! もうそれしかない!」
対抗手段はないという話をしていたような気がするが……?
「確かに我ら海族の漁師が本気で挑めば、シーサーペントとて狩ることはできるだろうが。…………どれほどの犠牲がでるかわからんぞ。己らの誇りと、仲間の命を天秤にかけるというのか?」
なるほどそういうことか。この町に多い人間――海族とやら――は、ほかの人間より水精霊と相性が良いと聞いたような記憶がある。恐らく精霊術という形での発動はできなくとも、水中での活動には長じているということなのだろう。
しかし、犠牲を出さずにシーサーペントを追い払うような手段はないし、しかも大挙して挑めば追い払うどころか殺し合いに発展してしまうと、この老いた漁師は考えているということのようだ。
「もう吾輩とこやつの間で話はついたのだ。どちらにしても吾輩は動くぞ?」
そう言ったからか、あるいは先ほどの老いた漁師の「天秤」うんぬんという言葉が堪えていたからか、彼らは苦々しそうではありつつも納得はした様子だった。
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