第148話

 常々吾輩は人間どもは愚かだと思っているものだが、そんな人間の中でも程度というものがあるのはもちろんわかっている。

 幼いほどに賢明であるという性質のこともあるし、個体差というものもかなり大きい。なかには経験から学んで賢さを獲得する者もいるようであるしな。

 まあ、なんだというと、逃げ去って行ったあのような者たちについては思考を割くだけ無駄だということだ。

 そんなことより、もう一本サバのカバ焼を頂こうではないか。……いや、ほかにも屋台はたくさんあるから、そちらにも胃の容量を割り当てるべきであろうか。

 

 「……ふむ、これは難しい問題だ」

 『そうなん?』

 「ああ、次に何を食べるのが最適か、この吾輩の頭脳をもってしても容易には答えに辿りつけぬ」

 『あらぁ、それは難しいなぁ……。ほなら、あれはどうやろ?』

 

 普段からこの辺りの食べ物については詳しいようなことを言っていた水精霊が、悩む吾輩に助言をしてくれた。

 その指し示す先にあるのは、屋台ではなく露店。どこか別の場所で作ったものをここへ持ってきて売っているようだ。その商品は薄い板状の煎餅のように見える。

 

 『タコ焼ゆうらしいで?』

 「あれが?」

 

 吾輩の知る範囲では、タコ焼というのは丸く熱々のあれだ。なのにあそこには平たい煎餅のようなものが並んでいる。……非常に興味深いな。

 

 だが、次の行き先を決めたものの、向かう前に引き留められてしまった。

 

 「ま、待ってくれ! あんたに……いや、あなたにぜひ頼みたいことがある」

 

 真剣な表情で、カバ焼の屋台店主が言ってきたからだった。

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