第127話

 おや……? 入り口の方に人間の気配がするな。

 

 「おーい! バルドゥルさんはいるか?」

 

 吾輩がそのことを指摘するよりも、訪問者が声を上げる方が早かった。

 

 「お、おう! ちょっと、失礼」

 

 ふむ、バルドゥルは応対しに行ってしまったな。そうなると、この部屋には若干困ったように微笑むトジャに、申し訳なさそうなシャジャ、そしてこの吾輩ということになった。

 ここでまた吾輩が「気にしておらん」とか「もう水に流した」という趣旨のことを言えば、またぞろシャジャのコメツキバッタが始まってしまうであろうな。

 それは望むところではない。となれば話題を逸らすのが最善か?

 

 「ところで、吾輩自慢の尻尾であるが、これが濡れてしまうのが嫌でな。だから雨の日は――」

 

 人間が特に好むという小粋な天気トークを展開し始めたのだが、ちょうど気分がのってきたというところで中断された。

 

 「ああ、本当にいらしてたのですね!」

 

 すぐに戻ってきたバルドゥルがゲイルを連れていたからだ。この町を守る武者集団でも指導的な立場にあるこやつは、日頃忙しくしているようであるが……はて、何故ここまで訪ねてきたのだ?

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