第128話
「キュピィの森で何か問題でも起こったのですか? あなたほどの方が突然こられるなんて」
部屋の中を一瞬不審そうに見回してから、ゲイルはそう疑問を口にした。それは「なぜ鍛冶屋にいるのか?」という意味だと、根が素直なゲイルの表情にはありありと浮かんでいた。
その態度は褒められたものではないが、日頃からまあ誠実だといえる言動のゲイルであればこそ、バルドゥルも不快だと感じはしなかった様子だ。
「ゲイル殿、あなたほどの方というのは……?」
とはいえ不快ではなくとも不安ではあったようで、バルドゥルは恐る恐ると問いかけた。
この町を守る武者たちの第二位に位置する人間が、このような態度で訪れたのだ。それでは何か良からぬことが起こったと思うのも無理はない。
「え、えぇ……、シャ=ジャ・キュピィさんといえばキュピィの森における地位はもちろん、精霊学者の中でも自然への造詣が深いことで知られています」
地位というのは先ほど広場でシャジャ自身が自己紹介していたことだ。しかしそれだけでなく、このシャジャ自身も尊敬されるような人間であったということか。
「ほう……きょうだいで学問に勤しんでいるのだな」
「そうなのですよ」
中々に迷惑な勢いではあったが、かつてトジャも熱心に精霊のことを探求していたと思い出す。吾輩の言葉にそのトジャもにこにこと頷いているからには、実際にこの二人は身内としてだけでなく学者としても良い関係であるのかもしれないな。
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