第124話

 そのキュピィの森とやらを知らん吾輩としては、そこの族長というのもどれほどのものかはわからんが……、なんであっても長というのは軽いものではない。

 まあ、世襲制なのかもわからんから、このシャジャなる人間が次期族長であるのか、ただ有力者の子供というだけなのかもわからんが、人間というのはそういった親子の繋がりを重視する傾向があるようにも思う。

 つまりは自分からそう名乗ったのであるし、意味のないものではないのであろうな。

 ちなみに自己紹介をした後で、シャジャはまた頭をぺこぺこと下げている。まさにコメツキバッタのように、というやつであるな。この世界にもいるのかは知らんが。

 

 さきほど吾輩はこの人間に「何の用なのだ?」と尋ねたのだが、どうにも頭を下げるのに夢中でそれは忘れてしまったらしい。

 ……いや、誠実な態度に対して意地悪な言い方をするものではないな。それだけ謝るのに必死だということだろう。

 

 「このためにわざわざ来てくれたのか?」

 

 言葉と調子を気遣いながら、トジャの方へと聞く。

 

 「姉にどうしてもといわれまして……」

 「どうしてト=ジャが、私に付き合わされたという態度なのですか!」

 

 悪びれない態度で答えたトジャに吾輩が何かをいうよりも、となりのシャジャが突っ込む方が早かった。とはいえ、言葉のわりにはぎすぎすしているという感じでもなく、本当にきょうだいとして親しくしているのだなと伝わってくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る