第107話
「まずこれは現在有力とされる説なのですが、精霊とはつまり自然現象そのものであり――」
聞いたのはまずかったか? 何やら長々とした話が始まったが。
「――つまり人間が、何に対しても神秘性を求める生き物であることに端を発し、それでいて自己投影的に現象に人格を付与する傾向というものが――」
「つまり」というのは話をまとめる時に使う言葉ではなかったか? そこからさらに長話が始まったのだが?
しかし、いくら聡明で知られる吾輩であってもだ、「何なのですか」などという漠然とした質問に答えられるほどの知識などない。ここは学校ではなく、吾輩はこやつの教師ではないのだぞ。
「――ですので、つまり――」
「ふむ、まあ吾輩としては話せる相手と話している、ということだ」
二回目の「つまり」が出てきたところで辛抱ができなくなって口を挟んだ。もしこの場に礼儀にうるさい者がいたとしても、吾輩を咎めることはしなかっただろう。「つまり」といったらつまれというのだ、まったく。
「毛玉さんには“精霊”が人格を持った存在として認識できて……視えているということですねっ!?」
「そうだが……」
吾輩はケダマさんではなくタヌキさんなのだが……、まあそれはそれとしてこやつの言いたいことがようやくおぼろげにわかってきた。
先ほどの長々と語っていたのは、人間の中では精霊とは架空の、自然現象を説明するための存在と思われているのが一般的だ、と。しかしトジャは精霊という存在がいることを学説として推しているために、その手掛かりかもしれん吾輩を見つけて興奮している、というところか?
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