第106話

 「精霊の話だったか? 何が聞きたいのだ?」

 

 吾輩が切り出すと、一度は落ち着いたトジャがテーブルに体重をかけるように身を乗り出してくる。

 

 「精霊とは何なのですか!?」

 「「うぉっ!」」

 

 大きな声に驚いて、吾輩とバルドゥルは揃ってのけ反った。先ほど吾輩を起こした時の狂乱状態と比べればましだが、また落ち着きをなくしつつあるようだ。

 まったく……面倒な人間であるな。

 

 ……うむ。吾輩とて全てを知るなどといえる訳ではないが、前の住処からこちらへきて、セヴィの町に住み着く経緯で、それなりに色々と経験した。

 それを包み隠さず全てこやつに話すのは……良くないようにも思える。

 

 “ここ”で経験したことに絞って話す方が良いであろうな。

 

 「何といわれてもだな……」

 

 ……ふむ、方針はそうであるとして、どう説明したものか。

 

 「逆に聞きたいのだが、トジャは精霊とは何だと考えている?」

 「ほうほうほう! そうきましたか!」

 

 トジャはとても嬉しそうに手を叩いている。やはり面倒な……。

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