第103話
「骨を撒くというのは毛玉さんが発案したとっ!?」
「発案というか……、精霊から聞いたと本人……いや、本タヌか……? は、言っていましたな」
いざ寝入ろうとしたところで、一層と大きな声で話すものだから、徐々に意識が覚醒してくる。
起きていようとするとものすごく眠いのに、寝ようとすると目が覚めるのは何なのであろうな。まあ、単にこの騒がしい場所が落ち着かないというだけなのだが。
「せ、せせ、精霊ですって!? 存在を認識できる人は稀に確認されていますが、声が聞ける人なんて聞いたことがありません!」
トジャの声がどんどんと大きくなっていくものだから、鬱陶しさもまた増していく。
「お、落ち着いて、ト=ジャさん。俺のような一介の鍛冶師にそのように言われてもなんとも言えません!」
あの無駄話が長いバルドゥルをたじたじとさせるとは、トジャめ……あなどれんな。吾輩は今、目を閉じておるから見えんが、バルドゥルの困った顔は容易に想像がつく。
「しかし山族にも神託を受ける聖職者はいました。確かに精霊と話すなんて聞いたことはありませんが、それほどありえんことなので?」
「神託は神々からの御言葉。存在として高位で、超常的な力の強い神々であるからこそ、“壁”を超えて言葉を届けることも可能であるのでしょう。精霊はそもそもが意思なき自然そのものという説を提唱する者もいますが、私はその“壁”を超える程の力が精霊に……あともちろん我々人間にも……ないのが、声を聞いた者がいない理由だと、考えています」
内容については聞いている訳でもないが、何やら長々と退屈な話をしているということだけは、半覚醒の意識でも認識できた。そのおかげで、再び吾輩の頭は心地よい眠気に覆われていく。
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