第68話

 しかし改めて説明するとなると……、どう言ったものか。

 

 「無理な動きで戦った影響で体のあちらこちらが痛くてな、それを湯につかることで癒したい、ということだ」

 

 これで伝わるか……? と思ったが、アイラはどうにも首を傾げてしまっている。

 

 「た、たたかう……っすか? 師匠ともなれば、やはり人知れず日夜戦っているものなんすね」

 「は? ……ああ、いや、そうか、そうだったな」

 

 吾輩のぽこんと変身術はかくも偉大で、ばれる気配などヒゲの先ほどもない。なるほど、ここへ来た直後のアイラの勘違いはそういうことであったか。

 別に種明かししてしまってもよいのであるが……。また必要となる日がくるかもしれんからな、黙っておこう。外見に踊らされがちな愚かな人間に対しては、伏せておいた方が便利な札だ。

 

 「それはそうとお湯で、何がどう癒されるっすか? 清潔であるにこしたことはないということなら、水浴びでも良くないっすか?」

 「…………はああぁぁぁ」

 「特大の溜め息っす!?」

 

 これだから……これだから風流と詫び寂びを解さぬ者は……、はああぁぁ、本当に……はあぁ。

 

 「アイラよ、昼間からここへきているということは時間はあるのだな?」

 「あ、え、あ……は、はいっす! エルダートレント討伐の疲れを抜くために順番で休みになってるんす」

 

 こういうことは口でどれほど説明しても仕方がない。百聞は一見に如かず、とは良くいったものだ。

 

 「ついてこい、愚かな弟子よ……。そなたに見せてやろう……“本物の癒し”……というものを、な」

 「喜んでご一緒するっすけど……、師匠どうされました? 様子がかなり変っす」

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