第69話

 やや人格面に問題はあるが、吾輩はセヴィで知識人は誰だと問われればそれはリットだと思っている。賢さであればエリスであろうが、知識習得にはどうしても年月を必要とするものだからな。リットも年寄りではないが、若くして一つの教会を任されているだけのことはある、やや人格面に問題はあるが。

 

 「タヌキ様! この間はお疲れ様でした、神剣はちゃんと――むぐっ!」

 「しんけん? え、師匠どうしたんすか、急にリット司祭へじゃれついたりして……」

 

 教会を訪れると、後ろに従えたアイラが見えていなかったらしいリットが神剣メテオールについて話そうとしだしたから、吾輩は慌ててリットの口を塞いだ。

 ちなみに神剣はどうしようかと悩んでミティア様の像の足元に戻したところ、すっと像に吸い込まれていった。今もその内部に収まっていることを、吾輩はなんとなく感じられているのでそもそも嬉しそうに報告される必要もない。

 とはいえ吾輩も慌てていたからといって、飛び掛かって前脚で顔面を押さえるのはやりすぎであったかもしれぬ……。

 

 「あはぁ、に、肉球が……っ! もっと、強めに踏んでくださいぃ!」

 「ぽこ!?」

 

 やりすぎなどと見当違いであった。

 いっそ噛みついてやろうか、この変態司祭め……、いや、それも無駄であろうな……。

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