第67話

 「しかしアイラよ、何をそう浮かれておるのだ?」

 「あ、わかってしまったっすか? 師匠~」

 

 ……ふむ、鬱陶しい。

 だがここは人間より上に位置するタヌキとして、そしてアイラの師匠として、期待に応えてやるのが大人げというもの。

 

 「………………はあ。その浮ついた様子を見れば、良いことがあったということはわかるぞ」

 

 それでも少しの間が空いてしまったのは、我が身の未熟さゆえか。

 

 「聞いてください、師匠! 私、正式な騎士になれたっす!」

 「おお、一人前と認められたということか。よく頑張ったな」

 

 大した指導をした記憶もないが……、それはそれとして、弟子が良く学び、そして努力したことが認められたというのは喜ばしいことだ。吾輩の尻尾も自然と左右に揺れようというものだな。

 

 「し、師匠……っ!」

 

 唐突にアイラの視線が右に左に泳ぎ出したのは、感激しているのだろうか……? まあ、良いかそんなことは。

 

 「あっ、それはそうと……、とうじって結局、何なんっすか?」

 「おっ、やはり気になるようだな。そんなに聞きたいのであれば、教えてやらんでもないぞ」

 

 さすが昇進を果たした我が弟子は一味違うな。目の付け所が良い。

 

 「…………自分で言うのも何っすけど、私は師匠に似てきただけかもしれないっす」

 「なんだぼそぼそと?」

 「や、聞こえてなかったのなら、別に大丈夫っす」

 

 ……ふむ?

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