第52話
ミティア様の神託では『足元』ということだが、はて……? 『いいもの』とやらを受け取りに行きたいところではあるのだが、さしもの吾輩も会いたいからと会いに行けるお方ではない。
「どうすれば良いのだろうな……?」
「はぅ……っ。…………あ、そ、そうですね、普通に考えると……、いえ、それはさすがに……」
話しかけると一瞬だけうっとりとした表情になったリットも、その後は空気を読んで真面目に考えている。だがその“普通”はありえんだろうに。確かに吾輩が以前一度だけお会いした機会というのも、そういう時であったが……、この状況でミティア様からその様なご指示がある訳もない。
とはいえ、意味もなく神託が降りるということは、もっとありえない。
確かに今はゲイルたちが出発してしまう前に追わなくてはという焦りがあるが、その前にご指示があったということは、今行かなくてはいけないのだろう。
「……ふむ、……ふむ?」
考える時の癖として前脚でヒゲを撫でようとして、顔前を手が通過して今は形が違っておったことを思い出す。
「ぅっ!?」
不思議な音がして視線を向けると、リットの口から出たモノであったようだ。今は胸を押さえて何やら息を荒げておるが……、まあ、いつものことか。
「ミティアさまはきょうかいであえるの」
そこにエリスから助け船が出た。リットが正気であれば「最高神ミティア様は世界中どこにでも云々――」と言い出しそうであるが、幸いまだ小さく呻くだけのこやつが反応することはなかった。
しかし、そうか、素直に考えるとその通りであったな。先入観なく思考できるエリスは、やはり賢い。
「ありがとうエリス。では吾輩はさっそく教会へと寄ってから、魔獣退治へと赴こう」
「がんばってー」
見送るエリスに人間っぽく手を振ってから、吾輩はリットの司祭服の襟を掴んで歩き出した。
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