第51話

 とはいえ、この姿であればゲイルの奴も納得するのではないだろうか。

 

 「タヌキ様……ですよね?」

 「そうだ、そんなに違うか?」

 「はい……お声はそのままなので話せば同一だとわかるのですが……」

 「いつものかわいいおこえなの」

 

 ……ふむ、それは困る。何せ葉っぱ変身をしたのは、吾輩の憧憬心を満たすためではない。言い方は悪いが……ゲイルたちを騙すためなのだから、バレてしまうようでは意味がない。

 

 「ん゛っ、あ、あー、ふむ。これでどうだ?」

 「すごい、シエナだんちょうみたい!」

 「とても凛々しいお声です……」

 

 精一杯低く声を出すようにしたが、これなら大丈夫そうだ。エリスの言うシエナというのは、薄赤の髪を後ろで縛っていたあの声も体も大きな人間だったか? 確かにあの常に怒鳴るような話し方をやめれば、今の吾輩の声とも近いかもしれん。何となく癪だが。

 リットの方は……、両手を組んで潤んだ赤い瞳を向けてきている様子でわかる。これは参考にはならんやつだ。

 

 「はっ!?」

 「リット?」

 「しさいさん?」

 

 突然、リットが目を大きく見開いて何かに驚いている。吾輩もエリスも、そのリットが上げた頓狂な声の方に驚いたが。

 

 「神託がありました!」

 「なんと!? ミティア様からであるか?」

 「はい」

 

 以前リットから聞いた話では、神託というのは滅多にあるものではないと思われたが……、続けば続くものだな。

 

 「“タヌキちゃんにいいものを用意したから、わたくしの足元まで取りにきてちょうだい” と……ミティア様は仰いました……」

 

 もはや吾輩の保護者のように…………いや、不敬だ、やめておこう。

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