第49話
吾輩がエリスと話していたところへ、足音が近づいてくる。
今は緊急事態であるから、来客があっても困るのだが……?
「タヌキ様!」
「リット?」
「しさいさんだー」
息を切らせて駆けてきたのは、教会の司祭であるリットだ。長い白髪も乱れており、よほど急いできた様子だ。
「はぁ、はぁ……ミティア様からの、神託がありました!」
「なんとっ!」
このような時に……、いや、このような時だからこそか? 何にしてもまずはそれを聞いてからだろう。
吾輩が姿勢を正してリットをじっとみると、隣でエリスも気をつけの姿勢をとっている。二人分の注目を受けて、ようやく息が整ったリットは大きく息を吸ってから目を見開く。
恐ろしいほどの気迫が伝わってくる。よほどの重大さの神託であったということか。
「“今のタヌキちゃんなら、できるわよ? それ” と……ミティア様は仰いました……」
「…………は?」
いやいや、仕える主に対して『は?』などというのも失礼なのだが、『それ』とはなんであろうか? ふむ……?
ふむぅ……? んぅむ……? …………ぽこ?
もしや……っ!
「タヌキさんどうしたの?」
「そこに何かありましたか?」
急に近くの茂みに顔を突っ込んだ吾輩を見て、二人は戸惑っている。だがここの葉っぱがちょうどいいと思うのだ。そうそう、ちょうどこのくらいの葉っぱを頭に乗せて……と。
「ではゆくぞっ!」
吾輩の声にも自然と力が入る。
「ぬぅおおおおお!?」
葉っぱを乗せた位置が暖かくなり、その熱が徐々に全身へと拡がっていく。
ボフンッ
「タヌキさん!」
「け、煙が!?」
煙の向こうからのエリスとリットの声は、何故か先ほどまでより妙に低い位置から聞こえた。
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