第48話

 さて、どうしたものか。

 

 「おなかいたいの?」

 

 住処で伏せて考え事に没頭していると、屋敷から出てきたエリスが心配そうにしている。腹や喉にあたる草の感触が心地良くて、この姿勢をとっていただけだが、体調が悪いのかと心配させてしまったらしい。

 

 「む、大丈夫だ」

 「よかった」

 

 子供を不安にさせるなど、タヌキの名折れだからな。

 

 「それにしてもあやつらめ、吾輩が少しばかり人間より小柄だからといって甘く見おって……」

 「……? タヌキさんもはやくおっきくなりたいのねー」

 

 堪え切れずに零れただけの愚痴だったが、エリスはエリスなりに解釈して共感を示そうとしてくれる。立場がそうさせている部分もあるのかもしれないが、賢くて優しい子であるな。

 おっきく……か、空想妄想の類になってしまうが、大きいのであれば良いのか、もしかすると。確かに人間というのは外見で判断することを好む性質があるようだが、いくらなんでも……。

 

 「人間にとって立派に見える姿にでもなれれば、良いということか……? ……ふむ」

 「すがた? へんしん?」

 「そのようなアーティファクト?だったか?がかつては存在したと、エリスは教会でリットから習っておったな。いやしかし、憧れはあるができぬからこそ憧れなのであろうな」

 

 吾輩の言葉から連想してエリスが首を傾げているが、そんなことができるのであれば今の状況は解決するな。頭に葉っぱを乗せてぽこん!というやつだ。

 吾輩とてタヌキの端くれ……、そうしたお伽噺に憧憬があることは否定できん。

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