第35話
『おそらくとは……何だ……。はっきりと言え……』
『十二分にはっきりと申し上げているではありませんか。神ならぬ精霊に過ぎぬわたくしが、絶対などと口にする訳にはいかないのですから』
火精霊も意外と絡むな……とか、地精霊のヒマワリについている顔が火精霊と揉めている時だけは表情がわかりやすいな……とか、まあ、あやつらはもう置いておこう。
どうでもよくなってきたというのが、正直な心情だ。
「バルドゥルよ」
「――っ!? む、な、なんだ! どうした? 気を悪くしたのか……?」
いつの間にか無言で吾輩の尻尾に向かって手を伸ばしたり引っ込めたりを繰り返していたバルドゥルは、声を掛けると肩を大きく跳ねさせてからこちらを向いた。
我が毛並みの高貴な艶に見惚れているからと、咎める訳が無かろうが。
「そなたの仕事場に乾いた木や骨のくずがあるのだろう? それをここに撒けば良いそうだ」
「仕事場だと……? 確かに鍛冶場の方にあるし、木くずを肥料とするのは聞いたことがあるが、骨といったか?」
さすがは実験農場の主。吾輩が今火精霊から聞いて知ったことの半分は、既に知っていた様子だ。同時に知らないことも半分はあったようであるから、吾輩が苦労してまだ揉めている二体の精霊から情報を得たのも無駄ではなかった。
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