第33話
まあ、なんだ。把握しているというのであれば、聞こうではないか。
「それで、理由は?」
『植物は天と地から恵みを受けて成長するものでございます。しかし、どうやら地から得られる恵みに翳りがあるようなのです』
非常にわかりやすく単純な話だな。しかしそうなると……。
「翳りに原因はあるのか?」
『そう、でございますね……』
ここで初めて地精霊が言い淀む仕草を見せた。いや、何かを思い浮かべる様子、か? どうやら、様々な可能性を検討しているようだった。
『このセヴィの周囲で育てられている植物からすると、明らかに異常事態でございます。そして……申し訳ございません、タヌキ様。根本的な理由まではわたくしにもわからないのです。ただ、遠くない場所で何かが起こっているのだろう、としか』
愚かな人間のよくやるパターン――急激な人口増加に対応するために自然に無理をさせた。という可能性も考えていたのだが、それは吾輩の杞憂であったようだ。
さらには、原因については結局不明であるか……。
「……ふむ、ではどうすればよいかもわからぬ、な」
こちらをいやに熱い眼差しで注視するバルドゥルを無視したまま、前脚でヒゲをはたくように弄んで気を紛らわせる。たしたしという感触が、頼まれたことに力になれなかった無力感をやわらげてくれる。
『いえ、対症療法的なことであれば、すべきことはございますよ』
あるのか!?
ふむ……なるほど。地精霊はその慇懃な態度と同じく受け答えも丁寧過ぎて、少々回りくどく感じるな。
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