第6話
しばらく揺れていた馬車が止まり、どこかに着いたのであろうことが察せられる。
吾輩を歓待するに相応しい場所であれば良いのだが……、もしそうでなくてもわざわざ指摘するのは上位種としては狭量に過ぎるか。
「――っ!」
「――? ――っ!」
しかし外から聞こえてくる声はどうにも緊迫感があるものだ。あの西洋風騎馬武者たちだろうが、少しは気を使えと注意してやるべきだろうか?
「タヌキさん……」
何せエリスが吾輩を抱く腕には力が入り、強く不安を感じていることが容易に感じられる。問題が起こった時にこそ、余裕を見せるべきであろうに。
「エリスはここで待っているといい。吾輩がちょっと様子を見てくる」
「えっ、でも!」
「大丈夫だ、何も不安に思うことなどない」
「……うん」
吾輩が離れるのは心細いであろうに、エリスは健気にも聞き分けてくれた。やはり人間は幼い方が立派であるな。
「しゅしんミティアさまのごかごがありますように」
何やらおまじないをしてくれるエリスの声を尻尾に受けて、吾輩は箱馬車の小さな窓から颯爽と飛び出した。
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