第86話 キャッチャーミット

 気がつけば誕生日も過ぎていて、直史は35歳になっていた。

 別に自分の誕生日はいいが、間もなく真琴も誕生日である。

 散文的な男である直史は、プレゼントにサプライズなどは考えたりはしない。

 直接そのまま、真琴に尋ねるのである。

「キャッチャーミットがほしい」

 娘も娘で、独特の物をほしがっていた。


 野球を始めた真琴のポジションは、ピッチャー、ファースト、外野を主に守っている。

 やろうと思えばまだ内野も出来る。

 だが真琴はキャッチングが上手いため、キャッチャーもやってみたいということなのである。

「左利きのキャッチャーか」

 直史としても難しい顔をする。

 確かに坂本という例はあるが、それでもごく少数派であることは間違いない。

 今のチームのキャッチャーミットには、右利き用しかないというのも当然であろう。


 真琴の打力はチームでも正しく評価された。

 しかしながら守備力に関しては、特に他と比べて傑出しているというわけでもない。

 またチームのキャッチャー事情が、あまり良くないのも確かである。

 だがキャッチャーというポジションの過酷さを、直史はよく知っている。

 基本的に直史は、コントロールに苦しんだことのないピッチャーだ。

 しかしジンや樋口をはじめ、キャッチャー陣はあんなプロテクターをしていながらも、全身痣だらけであることを知っている。

 さすがに女の子にそれは、と言いたくなるのも分かる瑞希である。


 瑞希としても直史の心配な気持ちは分かる。

 一方で真琴の気持ちが分からない。

 真琴は色にしても、ピンクではなく青が好きと言うようなタイプだ。

 まあ戦隊ヒーローならともかくプリキュアなら、青もいるのでおかしくはないと思うべきであろうか。

 瑞希は体が頑丈ではなかったこともあり、あまりスポーツはしてこなかった。

 男勝りの女の子、というのは確かにこのぐらいの年齢なら、普通にクラスにはいたと思うのだが。


 理解は出来ない。

 理解は出来ないが、否定すべきでもないだろう。

 ただあんまり男勝りすぎると、結婚に苦労するのではないか。

 そんなことを考えるあたり、瑞希もまた古風な女ではあるのだろう。

 弁護士が全員リベラルというわけでもないのだ。




 地元のスポーツ用品店に行くか、それとも通販を利用するか。

 ただ子供が使うものであるために、やはり実物で確認した方がいいだろう。

 もっとも左用のキャッチャーミットなど、そうそうあるものであろうか。

 そう思っていた直史であるが、意外とちゃんとあったりした。


 左利きのキャッチャーは不利。

 それは左打者の増えている現在、それほどの差ではない。

 確かにランナーが一塁に出た時、牽制はしやすいだろう。

 だが左打者相手であれば、外に踏み出して投げればそれで届く。


 左利きのキャッチャーが一度は全滅したのは、単に思い込みにより、一度いなくなったからだ。

 だから左のキャッチャー用の技術を、教える者がいなくなった。

 そんな中で自分から、左のキャッチャーの技術を発掘した坂本は、これまた化物ではあるのだ。

 また元ピッチャーということもあり、肩も充分に強い。

 その点ではさすがに、真琴が真似ることは出来ないであろう。


 ミットだけではなく、プロテクターまで一気に購入。

 今からキャッチャーもやるならば、チームの練習だけでは足りないだろう。

 幸いにも家には、様々なピッチャーの物まねが出来る、人間バッティングマシーンがいる。

 これでしっかりと投げてもらえば、上達も早くなる。

 自分もキャッチャーはやったことがあるが、複雑な気持ちの直史であった。




 直史は自分が、相当に器用であるということは、さすがに自覚がある。

 それになんだかんだ言いながら、160km/hオーバーのストレートなども、しっかりとキャッチしてきた。

 さすがにピッチングに回す器用さは、一番重視はしていたが。

 だがキャッチャーの技術であっても、真琴に教えることは出来る。


 ピッチングやバッティングも、バージョンアップは毎年行われる。

 そしてキャッチング技術もと言いたいところだが、これに関してはわずかに微妙な退化もあった。

 MLBでも人間の審判が判定はしているが、コースなどに関しては現在、AIによる判定も同時に行われている。

 これは本当に面倒であったが、直史にとってはむしろ有利に働いた。


 小学生レベルと言うか、アマチュアレベルであれば、そういったものは導入されていない。

 なのでプロでは衰えつつある、ある技術がアマチュアでは重要視される。

 それはフレーミングである。


 フレーミング、ピッチャーのボールをキャッチした瞬間に、ミットを動かしてボール球をストライクにする。

 実際にはそう単純なものでもないのだが。

 アメリカのキャッチャーなどは、この技術が一時期、上手と下手とで大きな違いがありすぎた。

 基本的に直史も、この技術は出来ている。

 重要なのは、キャッチした瞬間のミットの位置や角度。

 これを意識することによって、確かにボール半分ほどは、ゾーンを広げられる。

 もっとも小学校レベルであれば、さほど重要ではないのだが。




 はっきり言ってしまえば審判などは、スピードのあるボールであると、本当にゾーンの判定が出来ていない場合がある。

 単純に動体視力の問題で、それでも正面から見ているため、ある程度の信頼は置けるのだ。

 小学生の投げる球であれば、充分にゾーンは信頼できる。

 また小学生の場合そもそも、ストライクのなかなか入らないピッチャーさえ少なくはない。


 真琴はゴムボールで従兄弟たちと遊んでいる間も、普通にプロ並に厳しいゾーンで投げ合っていた。

 そして樋口のキャッチングも見ている。

 だが直史は、真琴に樋口の真似をさせようとは思わない。

 そもそもキャッチャーの基礎技術をそのまま叩き込むと、小学生には問題になる。

 本当は基本姿勢を叩き込むべきかもしれない。

 だが樋口が、それをしていなかったのだ。


 新世代型のキャッチャーの最高傑作とも言われる樋口。

 それはなぜかと言うと、走れて守れるキャッチャーであったからだ。

 走るはともかく、キャッチャーの守るとはなんなのか、と思うものもいるかもしれない。

 それは瞬発的に動いて、ファールフライに飛びつくというものだ。

 かつての重量型キャッチャーという姿はそこにはない。

 構えているときもわずかずつ体を動かし、キャッチングを微調整する。

 そしてキャッチしたらピタリと止める。


 真琴に教えたのは、片膝を付くというものであった。

 これをやっていると、とにかく圧倒的にキャッチャーは楽である。

 太ももを地面と平行にし、それを保つという状態は、太ももを太くして、俊敏性がなくなるという面もある。

 樋口などもそれを気にして、念入りにマッサージなどをしていたが。


 下半身の柔軟性と瞬発力は、ピッチングやバッティングにも影響する。

 特に真琴の場合は、低い位置から投げるサイドスローが重要であるので、絶対に股関節の柔軟さを失うわけにはいかない。

 また下手に力を入れた状態から立ち上がるのを繰り返すと、膝の故障にもつながる。

 なので上手く下半身を疲労させず、それでいてキャッチとスローが出来なくてはいけない。


 小学生のリトルリーグルールでは、ランナーの盗塁の時に、リードを取ることが出来ない。

 なのでキャッチャーの方の強さは、そこまで重要でもないだろう。

 また肩の強さよりも、スローイングの動作スピードを短縮する方が、実戦向けではある。

 あの名捕手野村克也も、肩自体はさほど強くなかったのだから。




 ピッチャーとキャッチャーというのは、兼任が難しいポジションだ。 

 どちらも上のレベルになると、確実に専門職になるからだ。

 MLBではわずかに、野手登録でありながら、それなりに使えるリリーフがいたりもする。

 だが本職の先発などと比べると、さすがにそのパフォーマンスは落ちる。

 バッテリー以外のポジションはどこでも出来る、などというユーティリティプレイヤーもいたりしたが。


 ただこの段階でこの二つのポジションをするというのは、間違いなく勉強にもなる。

 ピッチャーというポジションは基本的に、俺様人間じゃなければ通用しない。

 一見するとおとなしそうに見えても、実は頑固な人間でないと、どうしてもブレが生まれてしまうのだ。

 それに対してキャッチャーというのは、マイナス思考から判断を開始する。

 こちらはまた、完璧主義者であることが多い。


 小学生のキャッチャーというのは、本当にまず捕れることが重要だ。 

 直史のやや手加減したボールというのは、実は捕りやすいものである。

 難しいのは実戦で、バッターがボックスの中に立っている場合。

 スイングをすればそれだけ、パスボールの確率は高くなっていく。


 直史の現役時代の、ピッチャーとしての顕著な特徴。

 それはエゴの異質さだ。

 ピッチャーであるからには、エゴの強い人間であることは間違いない。

 しかし直史のそれは、確かにエゴではあっても、個人の勝敗ではなく、チームの勝敗を優先するエゴであった。

 それを極限まで極めたために、敬遠の必要がないピッチャーになったというのが、訳の分からないところではあるが。




 ピッチャー経験の方が圧倒的に長い直史としては、いいキャッチャーの条件にもそれなりに厳しい。

 もちろんある程度のレベルを満たしていれば、どうにかなるのが直史ではある。

 ただキャッチャーは扇の要で、エースを活かすも殺すもキャッチャー次第。

 なのでボールの返球などには、細かくチェックを入れていく。


 ピッチャーは俺様人間が多いが、同時に意外なほど繊細であったりもする。

 そのためキャッチャーの返球がちゃんと胸元に来ないと、それだけで調子を崩したりもする。

 特に小学生のレベルであるなら、まずはストライクが投げられるだけで、ピッチャーとしては成立する。

 そのためにもまずは、テンポよく投げさせなければいけない。


 現在はピッチクロックなどもあり、限定された時間内での駆け引きというのが多くなってきた。

 それでも基本的にピッチャーに、ピッチングの開始のタイミングは任されている。

 キャッチしたら立ち上がり、胸元にしっかりと投げ返す。

 出来ればその時に、一言何か、声をかけてやってもいい。

「やること多い~」

「それでもまあ、ピッチャーの次ぐらいには面白いポジションだけどな」

 ピッチャーを最上位に置くあたり、やはり直史はエゴイスティックであった。




 器用さは遺伝するらしい。

 そして真琴は、明らかにピッチングに工夫を凝らしてきた。

 キャッチャーは逆に、普段と同じであることが求められる。

 それに対してピッチングというのは、対バッターへの配球だけでも、考えることが無数にあるのだ。


 NPBとMLBにおいて、ピッチャーの何が一番違うのか。

 それは直史は、配球の主導権だと思っている。

 日本の場合はキャッチャーが、リードの主導権を持っている。

 もちろんサインがベンチから出る場合もあるし、ピッチャーが首を振ることもある。

 だがそれでもたいがいの場合、コンビネーションはキャッチャーが考える。


 アメリカの場合は試合前に、バッテリーでミーティングを行い、おおよそのリードを考える。

 キャッチャーの役割というのは、ピッチャーの一番いい球を投げさせることだ。

 これはやはりアメリカの野球が、力と力のぶつかり合い、という要素が強いから考えられているのだろう。

 日本の場合はとにかく、バッターに打たせないことを考える。

 軟投派や技巧派と言われるピッチャーは、日本にこそ多い。

 もっともMLBはMLBで、狙ったコースに投げるコマンドの能力が、高い精度で求められるのだが。


 キャッチャーもするということは、それだけ自分でも考えるということだ。

 このあたりの考え方の違いも、日米のプロリーグで、通用するピッチャーと通用しないピッチャーがいる原因にもなるのだろう。

 組み立てが必要になると分かれば、コントロールも重要になる。

 それを意識しているかしていないかで、ピッチャーの普段の投げ込みなども、意味合いが変わってくるのだ。




 野球の試合において攻撃側で重要なのは、もちろんピッチャーの攻略である。

 だが手も足も出ないピッチャーが相手であれば、今度はキャッチャーの攻略を考えるべきだ。

 正確にはどちらに不安要素があるのか、全てを分析する必要がある。

 正捕手などというものは、エース以上に代えの利かないものであったりする。


 直史は無駄な反復練習が嫌いである。

 だが反復練習が全て無駄である、という考えを持っているわけではない。

 主に守備などにおいては、咄嗟の判断というのが必要になる。

 思考するのではなく、反射で判断する。

 それが出来るようになるまでは、反復練習をするのが効果的だ。


 キャッチャーの、ピッチングのワンバウンド処理なども、とにかく経験を積まなければいけない。

 基本的には胸に当てて、前に落とすのだ。

 絶対に後ろに逸らさない、というのがキャッチャーの誇りである。

 それはある意味、リードや盗塁を殺す以上に、重要なものである。

 実際に野球をやっていながら、キャッチャーが球を捕れなかったために、他のスポーツに転向してしまった選手もいるのだ。


「おとーさんって野球ならなんでも出来るね」

 それは買い被りすぎである。

「門前の小僧、習わぬ経を憶える、ということわざもあるからな」

 直史の主観としては、その程度のものである。


 たとえばバッティングであれば、理解不能な大介はともかく、打てる球はとりあえずヒットにしてしまえるアレクや、狙い球を絞っての一撃必殺という、樋口のバッティングが参考になった。

 そしてキャッチャーであれば、ジンと組んでキャッチャーの重要さを知り、また樋口と組んでそのレベルの高いキャッチャーの技術を身近で見ている。

 器用という面もあるが、これは思考の問題であろう。

 言語化して学習するということについてなら、直史の野球偏差値は確かに相当高い。




 親の欲目というわけでもなく、真琴の運動神経や身体能力は、間違いなく相当に高い領域にある。

 それだけに残念だな、という気持ちがないわけではない。

 女子野球は確かに、高校などでは増えてきている。

 だがそれは、男子に混じってやる選手が増えている、というわけではない。


 シーナ以来、男子の領域で高校野球をやっている女子選手はいない。

 明日美やツインズなどは、大学野球でとんでもないことをやっていたが、高校の女子野球は裾野が増えているため、体格などで圧倒的に差が出る高校からは、女子野球に専念する方が普通なのだ。

 そして女子野球のプロはないので、男子に混じってNPBで活躍するしかない。

 だがこれまで、NPBでは女子の選手は誕生していない。


 どうせなら女子スポーツのマーケットが存在する、テニスやゴルフでもすればいいだろうに、と直史は考える。

 娘が上達するのに全力で応援しながらも、内心ではそう思っているのだ。

(でもチームスポーツがやりたかったんだろうな)

 真琴は直史の仕事の都合で、これまで引越しが多かった。

 また父親の姿を見ていて、周囲も野球ばかりであれば、本人が野球を選んでもおかしくはない。

 せめて武史の影響で、バスケットボールをしていた方が、怪我などは少なかったのでは、と思ったりもする。

 バスケットボールもプロのリーグなどないし、接触プレイでの怪我などはあるのだが。


 どんどんと上達していく姿を見るのは喜ばしい。

 それでもどこか、釈然としないものがある。

 やはり直史は直史で、どうにも保守的であると言うか、女は女らしく、という古風な価値観に囚われてはいるのであった。




 内心で賛同はしていないながらも、全力で指導はしていく。

 複雑な気持ちになる直史は、ちょっと情緒が安定しない。

 瑞希としては直史の「女の子に対する理想」が問題なのだとは思う。

 どうせ放っておけば、次第に女の子らしくなるだろう。

 女親の方が、娘の成長には楽観的である、ということもあるらしい。


 そんな真琴であるが、小器用にキャッチャーまでやるようになったのは、悪いことではないのだ。

 実際にこれで、バッターとして使いたいときに、ポジションをキャッチャーとして入れることが出来る。

 もっともまだまだ、教えることはいっぱいあるなとチームの監督やコーチは考えていた。


 そう思っていたのに、次の週の練習に来ると、キャッチャーとしての精度が上がってきている。

 目の前のファールチップも恐れず、スイングでキャッチミスをすることもない。

 これは女子選手特有のものなのか、柔らかくボールをキャッチして、後逸するということがほとんどなくなってくる。

 ここからさらに教えることといえば、打球が前に飛んだときの指示や、内野陣へのコーチングだろうか。

 もっとも小学生レベルだと、ピッチャーのコントロールで打たせて取るということはまだまだ難しい。

 パスボールをしないこと。

 特にワンバンの球をちゃんと前に落とすことで、キャッチャーとしては充分であろう。


 家で自手練をしているのは分かった。

 挨拶などをしていた母親に、野球の知識があることは確認している。

 だがそれだけでは、これほどの上達速度は考えられない。

 真琴と同じ学校の選手に聞いてみても、去年転校してきたというぐらいしか情報がない。

 だがアメリカでそれなりに長く住んでいたらしい、という程度には分かった。


 父親か兄が、野球経験者といったところだろうか。

 それも軽く聞いたところでは、詳しいことは分からない。

 同じ女子の聖子にも聞いてみたが、女の子の秘密を探ってはいけない、などと言われてしまった。

 いや、そういうことではないのだが。




 直接瑞希に尋ねてみて、普通に分かった。

「うちの主人は、甲子園でマスクを被った経験もありますから」

 なるほど、とそれは納得が出来る。実際に瑞希は、嘘は言っていない。

 10年以上前と今では、キャッチャーの常識も変わっている。

 だが真琴のキャッチャーとしてのあり方は、ちゃんとバージョンアップされた知識によるものだ。

 保護者欄に連絡のつきやすい、母親の電話番号が記入してあることは珍しくない。

 それなりにやっていた父親なのだろうな、と日本で一番多い佐藤姓なので監督の追及はそこまでに終わった。


 重要なのは実際に、実戦でも使えるかである。

 まずは紅白戦で、スタメンで使ってみる。

 この紅白戦も結果によって、次の練習試合での出番が増減するので、それなりに重要なのだ。

 そこで真琴のキャッチングは、充分に及第点。

 バッターがスイングしてもボールを後逸しないのなら、あとは暴投したボールをちゃんとキャッチできるかである。


 膝の使い方が柔らかい。

 子供は筋力が足りないので、理想的なキャッチャーのフォームを作ることが難しい。

 だが真琴はわずかな動きで自分の筋肉を固定化させないため、外れたボールにも飛びついていけるのだ。

 左のキャッチャーというのに、教える方が悩んでいたが、本人が勝手に上達していってしまう。

 ならば使ってみても問題はないだろう。




 ピッチングとバッティング、どちらも優れている。

 さらにフィールディングの拙さも、すぐに慣れてきていた。

 これが才能というものなのだろうな、とは感じる。

 だがこれならば普通に、女子の他のスポーツをやってもいいのでは、とも思うのだ。


 母親である瑞希ではなく、祖母が迎えに来た時などもあった。

 その時に他の保護者としての立場から、そういったことを聞いたこともある。

 だが保護者としては、本人がやりたいものをやらせるのが、一番いいであろうということであった。

 ちなみに最近は基礎体力作りのため、ダンス教室なども通い始めたのだとか。

 子供に金をかけるだけの資産を、親が持っている。

 教育というのは、ただ勉強だけが出来るようになればいいというものではないのだ。


 ただせっかくキャッチャーの装備まで用意してもらってなんだが、はやり正捕手は固定しておいた方がいい。

 真琴の場合現時点では、ピッチャーをやらない時はファーストが一番向いていると思える。

 シニア以降に比べると、リトルリーグのファーストの役割は、かなり高いものとなるのだ。

 なにしろまだ未成熟な子供たちのため、ファースト送球が乱れたりすることも、それなりにある。

 ピッチャーとキャッチャーを除けば、普通にボールに触る頻度が多いのは、内野ゴロをアウトにするファーストである。

 真琴はこの年齢では背が高く、ジャンプ力なども優れている。

 なのでファーストで、送球をしっかりとアウトにしてもらいたいのだ。


 これが高校野球レベルになると、基本的にファーストは比較的楽なポジションとなる。

 左打者が多くなり、右に引っ張る打球が増えたといっても、ファーストにはスラッガーがいることが多い。

 実際に監督の判断でも、ピッチャーをしていない時の真琴には、ファーストとしてバッティングを期待しているのであった。

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