第7話 イベントに向かう為に(及川)

 あれだけ準備の時間を費やしたのだが、まだギリギリになって変更が入るのではないのだろうかと、ドキドキしながら帰宅した。家に仕事は持ち込みたくないので、ギリギリまで会社にいたが、連絡は来なかった。心配なのだが、自分から連絡をするのはわざわざ仕事を増やす行為になるので絶対しない。出来れば増えて欲しくないし。

部屋に入りふう。と一息つくと、財布と鍵とスマホなどの小物が入る程度の大きさののピタリと背中に付いているショルダータイプのカバンを下し、かける。さっとご飯とお風呂を済ませて、サイドテーブルに置いてあるゲームを取り出しベッドに座る。電源をつけて、飲み物を置いて画面を見る。大きいモニターの方がしやすいので、テレビに連結させて、コントローラーだけ手に持った。本来、付属のコントローラーは両手が違う動きが出来るようになっているのだが、ゲームによっては両手で一つのコントローラーを握って使う方が扱いやすい場合もある。今回するゲームは、及川にとってはコントローラーを両手に分けて持つよりも、一つになっている方が使いやすい為、そちらの用意をしていた。ゲームの接続も滞りなく終わり、夜食に用意した野菜スティックを頬張りながら武器選びをしている。今及川がやっているのは、陣取り系のゲームで、オンラインでチームになった人達と協力して陣地を広げる協力対戦ゲームだ。及川は色々な武器の特性をある程度知っている。前シリーズである程度遊んでいた為、今回出た武器以外は使っていた。新しい武器も、使い方は試し済みで分かっており、攻め込む武器が好きなので攻撃重視の武器を使う。

 及川がゲーム好きなのを知っている者はそれなりにいるのだが、ゲームをしている知り合いと遊ぶ系統が違う事が多くてあまり一緒にすることは少なかった。仕事が忙しくなると余計に合う時間が少なくなり一人でオンラインに繋げる事が多くなった。オンライン上でのゲーム友達も増え、時間で言うとオンライン上でのゲーム友達と遊ぶことが多くなったが、元々自分から誘う事をあまりしない。誘われたら参加する来るもの拒まない姿勢で、一番多いのは野良でのプレイだった。まぁ無理もない。いつも起動する時間が深夜帯で尚且つ短時間のプレイが多いからだ。何より始める時間も一定していないし、その通りの時間に始めることが出来ないことも多い。その為、自由度の高い野良での参加が増えて行った。

 オンラインでチームを組むのには数分かかる。その間にサイドテーブルに用意した野菜スティックをポリポリ食べて麦茶を飲む。寝る前なのでカフェインの入っている物は控えているが、普段はみんなに少し心配されるがエナジードリンクを飲んでいることが多い。カフェイン量には一応気を付けているが、味も好きなので飲めるギリギリの量まで飲んでしまう。だがこの時間は流石に明日に響いてしまうので仕方なくやめた。明日は特に五筒を迎えに行ってから現地に向かうので、カフェインを摂取して遅くに寝てしまい寝坊してしまうのはまずい。でも、ゲームはしたいのでスマホでアラームを付けておき、時間を決めて行おうと帰る前から決めていたのだ。しなくてはいけない作業は全て終わらせたし、明日の準備も出来ることはした。安心してゲームが出来る環境を作り今始めるので、問題はない。と明日の確認をし終わる頃にチームが決まった。

前シリーズを始めてした時は画面酔いしてしまい、長時間できなくて困っていたのだが、酔い止め薬を飲みつつ進めているうちに慣れてきて、好きな時間思い切り遊べるようになった。そうなると、及川は極めて行きたい気持ちが強く、いろいろな武器をある程度使いこなせるようにまでなり、オンラインでのランキングもそこそこ上位をキープし現在に至る。

自分のチームの武器のバランスはまあまあ良い。近距離タイプ、遠距離タイプ、バランスタイプ、が入っている。及川は敵チームに攻めていき陣地を広げるのが好きなので、近距離での戦い方で存分に挑めそうだ。始まる数秒前、コントローラーの握り具合を確認してつなげたテレビ画面をみる。ベッドに座ると丁度良く見れるように高さは40センチほど高さのある棚の上に置いてある。棚の中は、勿論ゲームソフトにゲーム機が置いてある。ふう、と一息入れると同時に対戦がはじまり、及川は一気に中間部までほぼ塗らずに駆け抜けていく。後ろの陣地塗りは、守りの人たちに任せる。もしも、皆が攻めに徹するタイプなら、自分がダウンした時に陣地の塗りを進めていけば良い。チーム戦なので、チームの動きで戦い方を変えることも必要だ。どうやら、バランスよく役割が別れたので、近距離攻撃に徹してよさそうだ。中間部は陣地の取り合いが激しく、相手から攻撃されることが多い。攻撃をされ続けるとダウン時間があり、自分の陣地の1番奥のスタート地点に戻され、数秒動けなくなる。ダウンを取るとその数秒は陣地を広げやすくなり有利になるのだ。及川は相手からダウンを取りたいので先陣切って進む。すぐ敵チームの近距離武器をもった攻撃型の人が同じく中間部に近づいてきた。相手もこちらを見えているようだったが、及川の方が反応が速かった。一人ダウンさせ、こちらに気づいていないもう一人もダウンさせた。どうやら相手チームの近距離型の人よりも及川の反応が速く、ダウンを取り前に進んでより陣地を広げに行けそうだ。しかし、中々先に進めない。守りの陣営が硬い。押し切って進みたいのだが前に進めないうちにダウンさせた2人が戻ってきて3対1の体制になってしまいダウンを取られてしまう。何度か挑んで守り陣営をダウンさせることが出来た。しかし制限時間の数十秒前だったので、陣地を広げる所まではあまり行かなかった。陣地の証である自分たちの色に塗る作業を及川はする所まで出来ず勝てるかどうかギリギリのラインだ。それでも残りの時間、前衛に自分の陣地の色を付けれるだけ付けようとボタンの連打をする。タイムアップになり、一息ついて麦茶を飲む。ちらりとスマホのアラーム画面を見て、時間を確認した。次の試合を出来る時間はまだまだあるが、初戦は勝てなかったかも、と思いつつ自分の陣地の色の面積を見る。自身の戦いで荒れていた部分以外は、綺麗に塗られていて、自分側の塗り漏れがほとんどなく勝てた。チームの人がしっかりと陣地を塗り固めてくれていたお陰だ。何試合かは敵味方混ぜてのチーム編成になり、敵だった人と同じチームになり協力するし、味方だった人が対戦相手となる。途中人が抜ければ、そこにチームマッチング待ちの人が入るようになっている。どうやら一人抜けたらしい。先ほど自分のチームにいた人が抜けたようだ。普段誰が抜けたとかは、ゲームしている時によく見かける名前なら憶えているが、あまり興味を待っていないので見ていない。今回抜けた人は、おそらくゲームプレイ時の記憶になかったので、過去マッチングはしていないと思う。なぜ初見の抜けた人の名前を覚えていたかというと、抜けたのがイヅツというプレーヤー名だったからだ。そういえば五筒はゲームやっていただろうか。いろいろ話しはするが、休みの話や、趣味の話はお互いしていなかったな、と振り返る。まあやっていたとして、名前は変えてする人が多いし、おそらく別人だろう。ベッドの上で胡坐をかいて、ポリポリ野菜スティックを食べていると、次の試合が始まる。モグモグしながらプレイしつつぼそりとつぶやいてしまう。

「んー。五筒の好きな食べ物は知っているんだけどな。」

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