お勉強会
「エーリヒさんが今読んでいる本ってどんな内容なんでしょう?」
小さな本屋のカウンターで古い本に目を通すエーリヒに、ワイスはお淑やかな声をかける。
「おとぎ話の物語。醜い姿に変えられてしまった王子様は美しいお姫様とキスをして元の姿に戻った、といった話。ちょっと調べ物でね」
表紙が分からないほど擦れている。
ワイスは関心を抱き、今抱えている歴史書を棚に戻した。
「私も、読んでもいいでしょうか?」
「もちろん。だがこの本は貴重な借り物でね、いくら勉強熱心な君にも渡せないんだよ。よく似た童話が左の棚にあるから読んでご覧」
エーリヒが指した本棚から一冊、背表紙に指を引っかけて取り出す。
「これロット、字の読み書きくらいは身に着けた方がいいぞ」
図鑑をパラパラと流しめくるロットに、エーリヒは肩をすくめて注意する。
「だってさぁ退屈っていうか、なんていうか……体がやりたがらないんだってば」
「なんとまぁ見事に、勉強部分はワイスに、運動部分はロットに、しっかりパパの優秀なところが引き継がれている。だが、今日は小人狩りの依頼が来ていないから諦めなさい」
ガックリと項垂れるロットは唇を尖らせて、垂れ目を細く気だるげにして図鑑の説明文を紙に書き写す。
嫌々ながらも取り組むロットに微笑んだあと、本棚の前で童話を立ち読むワイスに目を向けた。
ややつり目のエメラルドグリーンの瞳がページを読み取り、幾度も動く。
表紙を覗いたエーリヒは、イスの背もたれに背中を預けて小さく息を吐いた……――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。