第4話

 (やっぱり生きたい)


 不思議だった。死を覚悟したつもりだった。頭の中に何かが聞こえた気がした。気のせいだ。頭が狂ったと思った。だって目の前に私を食べようとしている化け物がいるから。


 (……遅く感じる?)


 大口を開けてるからよくわからないが、化け物の下から落ちる唾液がゆっくり見える。なぜか怖く感じない。


 (でも、死ぬの変わりないか。無抵抗のまま殺されるのも嫌だし少し抵抗ぐらいしよう)


 平手打ちでもしてやろう。そう思い右手を化け物に思いっきりかました。


 ぶちっ

そんなに

 (へっ? ちょ!)


 私の力なんてたかが知れている。そう思っていた。


 ぶちぶちぶち


 (ちょ! グロいグロい! 視覚と感触がグロいって! あっ)


 右手を振り切ってしまったがとっさのことで顔を掴んでしまい手には化け物の首を持っていた。


 「……どうしよう」


 なんか良く分からなくなってきた、諦めたと思っていたらなぜか化け物が遅く見えるし、首千切ってるし、私こんなに強かったっけ? でも


 「まだ沢山いてるし」


 立ち上がり前を見る、化け物は数えきれないほどいる。けど、さっきまで感じていた恐怖は無い。力がみなぎっている。万能感? それは分からないけど、身体が軽い、歯がゆい、このままでいたらやばい感じがする。何かで発散しないと。発散するには……


 「こいつらを殺すことか」


 右手に持っていた首を全力で投げた。前線にいた化け物の顔が破裂した。


 「へぇ」


 次に足元に転がっていた死体を蹴り上げた、脚力も上がっているのか簡単に浮いた。目の前に落ちてきた体をこれも全力で蹴り飛ばす。蹴られた体は化け物を何体も巻き込み吹き飛ばす。


 「あっは!」


 楽しい


 地面を蹴った、一瞬で化け物の目の前に来た。ビックリしたけどそれもすぐに落ち着いた、勢いそのままに化け物を殴り飛ばす。紙のように吹き飛ぶ、近くの化け物を蹴るとこれまた吹き飛ぶ。


 楽しい、たのしい


 浮かすように化け物を蹴り上げる、その足を掴み振り回す。すぐに千切れて無くなった。足元に化け物が持っていた剣があった、蹴り上げつかみ取り化け物を切り殺す。ある程度切り殺してもう一本拾い二刀で切り殺す。剣が壊れたら捨てる。また殴り蹴り殺す。


 たのしい、タノシイ


 化け物も抵抗する、棍棒で殴られた、殴り殺した、前髪が切られ右目を抉られた、視界が見やすくなったが片目が使い物にならなくなった、殴り殺した。スカートを破かれたロングだったのか短くなった、蹴り殺した。左手を槍で貫かれた、奪い取って数体巻き込んで貫いた。背中を切られた、胸の圧迫感が消えたから息がしやすくなった、足を消し飛ばして踏みつぶした。


 タノシイ、タノシイ


 のどが渇いた、化け物の血を飲む、マシになった。お腹がすいた、化け物の肉を咬み千切って飲み込む、少し満たされた。口が寂しくなった、化け物の目を抉って口に入れる、甘く感じた。


 タノシ……


 「あれ?」


 気がついたら周りに化け物の死骸と私しかいなかった。

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