第9話

私「どういう事ですか?井上さんが私達に嘘吐いてたって事ですか⁉︎」

小室「いやそうじゃない。

本人も知らない内に呪いを遂行していたんだよ」


私は混乱するばかりで居ると小室さんは説明を始めた


小室「僕達は三波さん、もしくは彼氏が『しりとりの呪い』を井上さんにかけていると思っていたが

実際行われていたのは『つがいの呪い』の方だったんだ」

私「つがいの呪いってオスとメスの生き物を用意して妊娠させて殺すってやつですよね?」

小室「あぁ。前にも話したが、呪いというのは途中までの作法が似通っているものが多い。

例えば蠱毒と猫鬼やしりとりの呪いとつがいの呪いの様にね。


まず三波さんと彼氏は大学を卒業してから復縁した

証拠に、その頃井上さんへの嫌がらせは一瞬無くなった。でも彼氏は井上さんとも付き合い続けた

それを三波さんは承知の上での復縁だったのか隠してたけど、後から気付いたのかは分からない

でもそれから暫くして、彼氏は井上さんにお金を借りている。

何らかの事情で、まとまったお金が必要になった訳だが

これが三波さんの妊娠だとしたらどうだろう?」


私「え?」

小室「三波さんの死で、つがいの呪いが成り立つのは『メスが妊娠している場合』だから

憶測だが可能性は高いと思う。


堕胎を薦められた三波さんは絶望して、今回の計画を思い付いた。

彼氏に堕胎するからと嘘を吐いて井上さんから金を借りさせた

そして関係をギクシャクさせて

彼氏に『井上さんと円満に別れられる様にしりとりの呪いをかけよう』と唆したんだ」


私「でも三波さんに唆されたからって、そんな簡単に彼女を呪おうと思いますかね?」

小室「井上さんを疎ましく思う理由が出来たとしたら?」

私「理由?」

小室「井上さん本人もまだ気付いていないだろうが、これがつがいの呪いの呪い返しが成立するのなら」



私はそう言われてつがいの呪いの手順を確認する



私「井上さんも…妊娠していた…」



小室「あぁ。彼氏は三波さんの堕胎費用を井上さんに借りている状態だし

もし井上さんが妊娠に気付けば、堕ろすとなれば当然借金の返済は求められるし

産むとなれば養育費などで永続的にもっとお金が必要になる。

金銭的に切迫した状況を切り抜ける作戦として三波さんは彼氏に

『しりとりの呪いをすれば運が良ければ流産するよ』とでも唆したんだろう」


私「そんな…」

小室「でも実際は確実につがいの呪いの呪い返しに遭うように計画していた。

彼氏につわりで体調が悪い井上さんを気遣うフリをさせて、自身が作ったスープを飲ませたのだろう。

つがいの呪いに使った塩水で溺死させたオスの生き物入りのスープをね」


小室「そしてメスの方は彼氏に渡し、しりとりの呪いだと思い込ませて井上さんの敷地内で殺させた。

こうして井上さんは本人も気付かぬ内に『オスを食べ、敷地内でメスを殺す』という

つがいの呪いの作法を行ってしまっていたんだ」


小室「そして三波さんは仕上げに彼氏を自宅の浴槽で塩水で溺死させ

自身が井上さんの自宅で死亡する事で、つがいの呪いを完遂させたんだ」



私「三波さんは、呪いで呪いを隠したって事ですか…」

小室「あぁ。作法が似ているから気付かれる事はまずないだろう」



私「でも呪いの作法はあくまでも『メスを敷地内で殺す』ですよね?

今までのメスは彼氏が殺しているし、三波さんが自殺なら井上さんがつがいの呪いを行った事にはならないんじゃ…」


小室「呪いの作法には『自分で殺す』とは書かれていないし

井上さんは家から出ようとしてドアノブをガチャガチャと回したんだろ?

その時に紐がキツくなる様にしていたら、三波さんの首を絞めたのは井上さんになる」



私「そう…ですかね?」



小室「呪いの正誤判定は、呪われてみなければ分からないよ」

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