高嶺の百合

痩せたウマヅラ

第1話 君との出会い

 2年生なのに初めての教室、初めてのクラスメイト。

でも、今からでもやり直せる。ここで、頑張るって決めたから。



「はじめまして、日高百葉です。東京から転校してきました。兵庫の方はまだあんまりなれませんが、ぜひみんなと楽しい高校生活を送りたいです。よろしくお願いします」


 クラスは好奇心に満ちた拍手で溢れかえる。ああ、「良さそうなクラス」でよかった。


 「では、日高さんの席はそこです。学校の事とかは隣の満島さんに聞いてください。満島さんも日高さんに色々教えてあげてください」


 先生の話に「満島さん」であろう子はこくこくと頷く。おとなしそうな子だなあ。ちょっと安心。私はそのまま指定された席へ向かう。


 「以上で、朝のショールームは終わりです。」


 ショールームが終わり、クラスがざわめき始める。おそらく転校生の私についての批評でもしているんだろう。いくらその会話に悪意や敵意が混じっていなくても、自分のいないところで自分の話をされるのは嫌いだ。捨て去ったはずの、嫌な記憶が頭を強く打つ。自分はなんて弱いんだろうか。

 

 「はじめまして!えーっと、私の名前は咲菜、、満島咲菜って言います。よろしくね。百葉ちゃんっていうんだよね、ももちゃんって呼んでいい?」


 びっくりした。急に反しかけてこられるんだから。


 「……ああ、うん。いいよ」


 「やったあ、じゃあよろしくね。ももちゃん! あ、そうだ私のことは、さなって呼んでね」


 「じゃあ、こちらこそよろしくね。…さ、さな」

 

 「うんうん!」


 さなは嬉しそうに頷く。心なしかクラスのざわつきが大きくなった気がする。時々、「あの満島さんが!?」みたいなのが聞こえてくる。え、なんだろう。この子も、訳ありなのかなあ?でもそんな雰囲気は気にも留めず、さなは話し続ける。


 「ももちゃんって、そのすっごくかわいいよね。初めて見た時から思った。めっちゃ可愛いなって。そんな子と友達になれて私うれしいなあ」


 「ええ、あ、ありがとう。」


 急に、なにを言い始めるんだろうこの子は。まあ、でも可愛いって言われるのはいやでもないし、うーん距離感がつかみづらいな。しれっと友達にされてるし。いや、うれしいけど。  


 「でも、さなも、その可愛いと思うよ、私。髪の毛もきれいにしてて」


 「本当?そう言われると嬉しいな。えへへへ」


 さなはなぜか顔を赤らめ視線をそらした。そんな仕草不意打ちだよ。女の子なのにドキッとしちゃった。こっちまで直視していられなくなる。またすぐに視線を戻すと、さなとバッチリ目が合った。


 「ふふふ、あはははは」


二人して、笑いがこみ上げる。うれしいな、こういう友達ができて。

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