4:2日目・一人いなくなった反応

 次の日。


 池口蓮也は登校して来なかった。


 朝のホームルームで担任が言うことには、昨晩から帰って来ない、と家から連絡があったらしい。

 誰か何か知ってるか? と教壇から聞かれたが、皆、顔を見合わせるばかりだ。


 学校は終日ざわめきに包まれた。

 池口の取り巻きの女子達は、「誰か抜け駆けした?」「どこへシケこんでるの?」などと大騒ぎしている。


「龍一、なんか知ってる?」

「いや、昨日別れてから見てねーな……」

「連絡来てる?」

「なんも」


 金堂と鬼塚も怪訝な顔で首をひねっていた。


 昨日の放課後は『戦果』を持って繁華街へ繰り出し、景気良く豪遊してから解散した。

 それから、蓮也には会っていない。


 何も聞いていないし、何も見ていない。


「そういや、L1NEも未読のままなんだ……」


 美花がスマホを取り出しメッセージアプリの画面を見せる。


『明日はあの変態どうしちゃおうか?』


 そんなメッセージが既読のつかないまま放置されていた。


 電話をかけてみても、電波の届かない場所にいるか電源が入っていないと言われてしまう。


「蓮也がアリバイ工作もなしにバックレるとか、初めてじゃない?」

「うーん、人に言えないような子と会ってるのかな……」

「平日の朝っぱらから? ヒマな大学生とか…… あ、専業主婦だったり?」

「うわー、働き盛りの旦那が仕事に行った隙に、金と体を持て余した若い人妻と……」

「ありえるありえる。ヤバいんじゃないコレ」


 凛子と日奈は、不安半分興味半分といった様子で無責任な想像を膨らませている。


 学校のスターの不穏なニュース、その噂話で持ち切りの教室。

 隅の方で本を読んでいるボッチに態々わざわざ構う生徒はいなかった。




 公治にとっては平穏な一日だった。

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