35.リボトルの気持ち

「…これがあの時ワイに起こったことや。冴子は今もその特別な拠点に親衛隊と居るわ。いや、親衛隊に閉じ込められとる。

あの後もお互い気まずくなって冴子とリアルで話す機会も減ってしまった。

冴子は何も悪い事をしていないのに、本当は話したいのに、でも話せない。こんな事で冴子を避けてしまう程にワイは弱いから。

…初めてタイガーと一緒にライブした時に今の状況を視聴者に聞かれた時にワイは「楽しいから辞めない」って言ったやろ?やけどちょっと前まで本当は直ぐにでも辞めたかった、他のプレイヤー達の様に親衛隊から逃げて引退したかった。でも冴子がどうしても心配で仕方なくて、いつかまた二人で一緒に遊べると思って、この嫌いになりそうな『VRファンタジー』をずっと続けとったんや。」

 

「リボトル…。」

 

 彼以外のまともなプレイヤーはミリア以外はこのゲームを辞め、最後の一人は親衛隊に捕まっている。そして外を歩いているのは敵、その中をたった一人でリボトルは耐えていた。その辛さは計り知れないだろう。

 

「でもそんな時に来たのがアンタやタイガーアイ。

タイガーはこの『VRファンタジー』を全力で楽しんでいる。それが視聴者にちゃんと伝わって、みんなも楽しくなっている。ワイもライブのアーカイブ見てたけど見てるだけで楽しかった。

ワイは楽しい気持ちを忘れていた、でもタイガーのライブで楽しいと言う気持ちを思い出したわ。タイガーが居なかったらワイも諦めてこのゲーム辞めとったと思う。タイガー、本当にありがとう。」

 

「リボトル…!」

 

 このゲームを楽しめずに辛い思いをしていたリボトルが自分のライブでまた楽しみを思い出したと言う事を伝えられて嬉しくなった。


「翡翠ミリアのに起こった事とその事に対するスナイフルさんの思いも分かったところで今後について考えよう。」

 

 そう芸夢さんが話を切り替えた。リボトルが過去を話したからってこの現状が変わったわけではない。それをどうするかを考えなければならなかった。

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