8、

それから三人はもう一つアトラクションに乗ってから、お昼にした。

 レストランはどこも混雑していた。入るのに時間がかかるし、注文してからも時間がかかりそうだったので、近くにあった食べ物を売っているカートがあったので、そこでクリスマス限定のオムライスとアップルパイを買って昼食にした。

 デミグラスソースがかかったオムライスの上には二つのトナカイの角の形を模したパイが乗っていて、プチトマトがまさに赤鼻のトナカイだ。

 アップルパイの上にはチョコクリームがかかっていた。

 どちらもコンビニで売っているものよりも高く、味も普通だと思うのに。

「すごく美味しいです!」

「た、確かに。美味しい」

「まぁな」

 何故かとても美味しく思えた。

 遅めの昼食を終えた三人は次のアトラクションに向かう途中で見つけたカートの商品が目に入り、カーヤは思わず立ち止まる。

「これ、少し被っていいですか?」

 それは人気キャラの顔を模した被り物で、耳まですっぽり隠れる、帽子というにはかなり大きめ。着ぐるみの顔だけくり抜いたような大きさだ。

「わぁ、可愛い」

 それを被ったカーヤは確かに可愛いらしく、大人びた印象の彼女を幼く見せて、また違う印象になる。

「舞香ちゃんもどうですか?」

 そう言って、舞香にも勧めた。そんなものを被ったことがないので、困惑する舞香に。

「二人で撮ってやるから、さっさとかぶれ」

 宏太にそう言われて、舞香は帽子を受け取り、そっとそれを頭につけた。

「ど、どうかな」

「うん、可愛いです!ですよね、宏太君?」

「ああ、とても温かそうだ。重そうではあるが」

 その感想に舞香は頬を膨らませた。どうやら気に入らなかったらしく。

「室井君にはこれが似合うよ」

 そう言って、宏太に無理矢理被せた帽子はかばが大きな口を開けてかぶり付く、とてもシュールなものだった。

「ははは、似合う。似合う」

「はいとてもお似合いです!」

「お前ら、絶対ばかにしているだろ!」

「よかったら撮りましょうか?」

 カートのお姉さんがそう提案してくれたので、スマホを託した。

「はい、チーズ」

 そして三人は並んで写真に写った。

「これ、買います!」

 写真を撮り終えたカーナがそう言ったので、舞香は驚いた。

「で、でも」

 こういうのはこの瞬間は楽しいかもしれないが、普段滅多に使わなくて、常に納戸の奥にしまうような代物になる。しかも値段も決して安くない。

「これもお願いする」

 どうやって止めようとするか考えていた舞香の耳に宏太のとんでもない一言が聞こえた。

「ちょ、ちょっと室井君」

「なんだ?」

 どうして止められたのかわからないという雰囲気だった。

 いや、きっとわかっている。でも、それを差し置いても、宏太がその帽子を買うという選択肢は揺るぎないものだった。

「じゃあ、私もお願いします!」

 

 それから三人はパークを満喫した。ショーを見たり、突然路上で始まったパフォーマンスに驚いたり、全くその場所から動いていなのに、まるで何百メートルも動いたかのような映像演出の乗り物には、流石の宏太は気持ち悪さとか忘れて熱中した。

 そして楽しい時間はあっという間に過ぎていき、ついにツリーの点灯時刻がきた。

「それでは皆さまカウントダウンをお願いします。3、2、1!」

 その瞬間、高さ数十メートルのツリーの電飾に一気に灯りがついた。それと同時に周囲の建物外壁にプロジェクションマッピングにより、あらゆる映像が映し出される。

「‥‥‥すごい」

 思わず息を呑むカーヤ。

 赤と緑のクリスマスカラーの電飾が回転するように光り輝いていたと思ったら、てっぺんの星が眩しいぐらいに輝いた瞬間、それが一気に水色と青の電飾に変わり、さらにそのあとは白い電飾が眩い光を放つ。

「き、綺麗」

「まぁ、確かに」

 自然の美しさには敵わないと思いながらも、それでもその光景はとても美しいと宏太は思った。気がつけば隣にいたカーヤが両手をそれぞれ舞香と宏太の手に繋いでいた。

「とても、とても。温かい」

 光の中にあるその横顔は宏太にはとても眩しく、何より綺麗で思わず見惚れていたら、ジト目で舞香に見られていることに気がついて、バツが悪くなり目を逸らしかけたが、彼女もまた嬉しそうに微笑み、まるで作戦を成功させたように繋いだ手とは逆の手で宏太に向かってグッとサインを出してきたので、彼もまた返した。

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