6、

 次に二人が選んだのは室内の中を映像と乗り物の動きを駆使して進むアトラクション。

 人気物語の世界感に飛び込めるだけあって、これもまた長蛇の列。だが、先ほどのコースターの言い切れない感想から、カーヤの口から言葉が途切れることはなく、列に並んでいる人の中で一番テンションが高いと言っても良いほど、興奮していた。

「私、ちょっとトイレ」

 列が半分ほど進んだところで、舞香はそう言った。

「あ、俺も。悪いけどカーヤは並んで待っててくれ」

「わかりました」

 トイレに向かう舞香の足取りはやはりどこかぎこちない。

「絶叫系が苦手なら言えよ」

「し、仕方ない。あんな顔を見せられたら」

「まぁな」

 人生で初めて、心の底から楽しめるジエットコースターに乗れるのだ。カーヤにとって、夢のような瞬間だろう。そこに水をさしたくない気持ちは宏太にも嫌ほどわかった。

「大丈夫なのか?」

 先ほどパンフレットを見せてもらったが、今から乗るアトラクションのほとんどが激しく動き回るアトラクションだ。

「だ、大丈夫だよ。今日は楽しい思い出いっぱい作るんだから」

「お前が元気なかったら、元もこもないと思うが」

「だ、大丈夫だから。だから、お願い、カーヤちゃんには」

 必死に訴えてくる舞香に宏太は嘆息する。

「わかっている。だけど、本当にやばいと思ったら、いうからな」

 それだけ忠告して、二人はトイレに行き、カーヤのところに戻った。

 そして列は建物の中に入って、話を知らない宏太でも、どこか独特な雰囲気に興奮した。

 そしてそこからはあっという間で、気づけば三人は出口をくぐり抜けていた。

「すごく楽しかった!」

「すごいです。映像を見ていただけなのに」

「‥‥‥‥」

 そしてアトラクションを乗り終えた二人はとても高いテンションで話をしている。その後ろを半歩遅れて歩く宏太にカーヤは目をやる。

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

 どうやら舞香は屋外の絶叫系には弱く、屋内の映像等を使って楽しませるアトラクションは得意のようだ。

 一方宏太は単なる絶叫マシンは得意なのだが、目まぐるしく変わる映像や光は苦手のようだ。

 そして次のアトラクションも3D眼鏡をつけて乗る乗り物らしく。

「ごめん、俺はパスだ」

「え、でも」

「お前らが乗っている間に回復するから」

 そう言って宏太は終わったら連絡してくれと言って、二人から離れた。

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