9、
呼びかけたことに後悔はしてない。その行動が全くの無計画で全く話すことが決まってなくても。
でもそれよりも。
「な、なんでそんな楽しそうなの?」
一緒に帰ることを提案した瞬間に、カーヤは顔に大輪の花を咲かせて、今もこのままどこか楽しい夢の王国か超元気特区に行きそうなテンションなのだが、ただ帰るだけだ。
しかもほとんどの落ち葉は地面に落ち、太陽も雲に隠れてしまった。枯れ木が立ち並ぶ道はとても寒々しく、北風が吹き抜ける度に、舞香はマフラーに顔を埋める。
「初めてなので。友達と帰るのは」
そんなことはないだろう。
「時々、他の女子と帰っていたんじゃ」
「彼女たちは友達ではないので。友達と言ってなかったので。
私が一方的に友達と思っていたので、正式な友達ではありません。
でも、絹延さんは私の友達です。
ですから、友達と帰ったのはこれが初めてです。嬉しくないわけないです」
そこまで言われると流石に照れくさくなり頬を赤くし、俯く舞香。
「そ、そんな屁理屈。大体なんで私なの?私が一人だったから?可哀想だと思ったから?」
「一人だと寂しいのですか?」
「え?」
「別に私は一人でも寂しくありません。まぁ、楽しい?というのでしょうか?
こういうふうに一緒に帰っている時のような気持ちになることもありませんので、確かにこれは良いものかもしれませんね」
「じゃあ、なんで私に構ったの?私と一緒にいても損しかないでしょ?」
「損してませんよ。損とは不利益を被るということですよね?
だったら私は損してません。こうやって得はすることはあっても」
「そんなの私じゃなくても、出来たことでしょ?」
「だったら、友達という定義は『偶々近くにいてある程度気があった誰でも良かった人』になりますね」
「そ、それは確かにそうだけど」
「だったら、別に絹延さんでも良いじゃないですか?
私、何か間違っているのでしょうか?」
そう言われれば間違っていない。
そして揶揄うようにも、はぐらかしている感じにも聞こえない。彼女は至って真面目にそう言っていると、何故か舞香には断定できた。
「それでも、あえていうなら。後悔しない?ためです」
「後悔しない?」
「はい、私がクラスメイトのルールに則り、あなたを無視することにする。それをしたら私が後悔するような気がした。
だから、私はあなたと友達になることを決めました。
そしてそれは私の中で決定事項。だから、絹延舞香さんには必ず友達になってもらいます」
思わず呆気に取られる。
強引すぎる。
無茶苦茶だし。人の意見なんて度外視の、まるでプログラミングされたからそういうふうに行動するみたいな。
まぁ、実際カーヤの行動パターンはそれに近いものなのだが。
でも、嘘ではないし、今までのことを考えたら決してこの子は引き下がらない。そう思えた。
だから。
「わかった。でも、条件がある。私の望みを叶えて!」
我ながらなんとも図々しく上目目線な発言しているなと思ったが。
「わかりました!」
カーヤが即答した。
それを聞いて、舞香は。
「あははは」
思わず笑ってしまった。
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