第11話 協力と依存
アルマジロの討伐後、
諸々の下処理が済み、目的地への移動を再開した3人。その後は目立った出来事もなく、順調に歩みを進めていた。
小春は動物の解体ができるし、サバイバルの知識も豊富。夏歩は狩りに
それに比べて俺はどうだろう。とくに際立つ能力はなく、唯一の男である以外は存在意義を見いだせずにいた。むしろ男とか女とか、夏歩のアレを見せられたあとでは大した意味もなかった。
べつに悲観したり、劣等感を抱いているわけではない。事実を客観視した上で、自分に出来ることを考えていた。
とりあえず、持久力に関しては自信がある。普段から鍛えていたし、週に2日のジム通いも欠かしたことがない。若い頃から水泳を続けていたので、海に行けば役立てるはずだ。まあ、魚が獲れるかは別問題だが……。
知識に関してはどうだろうか。この世界において、勉強ができても意味はない。どちらかといえば、発想力とか
ここ数日の行動からみて、自分なりの考えを持った上で動けている。と、前向きに評価したいところ。少なくとも、思考停止の考えなしではないと思う。
ほかに挙げるとしたら、キャンプやサバイバルのにわか知識、それにファンタジー関連に寛容なことか。こんな状況に至った以上、一番重要な要素だと言えるだろう。たとえ物語の知識だとしても、知らないのとでは雲泥の差がある。
――とまあ、いろいろと思案した結果、すぐに成果が生まれそうな要素はナシ。
常に考えをめぐらせ、事前の準備を整えること。危機に陥った場合を想定して、咄嗟に動ける気構えを持つこと。そして一緒に行動するふたりを尊重すること。この3つを念頭に置いて、やれることを確実にこなすつもりだ。
「先輩、難しい顔をしてますけど……大丈夫ですか?」
気持ちに区切りをつけたところで、小春が心配そうに声をかけてくれた。思わせぶりに濁しても、相手を不安にさせるだけ。そう判断して、自分の思いをふたりに話しておく。
「――ってわけだ。自分を
「なるほど、咄嗟に動けるかは重要ですね」
「私も気をつけるよ。まだ原始人を見てないし、そのぶんお気楽なのかもしれない」
「せっかく仲間がいるんだ。遠慮なく『依存』させてもらうよ」
「そこで『協力』って言わないところがリアルだね」
彼女たちの思いを聞いたりしながら、やがて目的の森へと到着。地図の現在地から察するに、この森を抜ければ海が見えてくるはずだ。
日没まではあと3時間、まずは森の中を探索することから始めていった――。
◇◇◇
メモを取りつつ歩きまわり、森の植生や生息する動物について、ある程度の情報を仕入れることができた。
欲を言えば、もう少し探索範囲を広げたい。――が、日没を考えるとこのへんが限界だろう。ひとまず休めそうな場所を見つけて入手した情報を整理する。
この森の木々は間隔が広く、幹の太さも5~10cm程度と細い。広葉樹がメインのようだが、海の方面にはヤシの木も生えている。
最初にいた山ほどではないが、果実や木の実も入手可能。種類については似たようなものだった。
森の中にいた動物は全部で4種類。鹿と兎のほかに、小型の鳥とイノシシを発見した。鳥は地球のものと同じに見えたが、イノシシは少し変わっている。
足が極端に短くシッポが2本、容姿は限りなくブタに近い。サイズはそれほどでもなく、地球にいる子ブタ程度だ。これくらいなら狩れそうな気がしている。
今のところ、ヘビやトカゲなどの爬虫類は確認していない。が、アリやミミズなどは普通に生息していた。おそらく気づいてないだけで、別の種類もいると思われる。
「あと気になることがひとつある」
「まだなにかありましたっけ?」
「ああ、ここに来てから
「そりゃあ、海が近いんだし当然じゃない?」
普通はそうだろうけど、俺はどうにも納得がいかなかった。
細かい内容は端折るけど、磯臭いのはプランクトンや腐敗臭が主な原因だったと思う。だが森の食材は腐らないし、獲った肉も一向に傷む気配がない。それが海の生物だけは例外、なんてことがあるんだろうか。
(異世界だからなんでもアリ、と言えばそれまでだが……)
この世界に来たときも感じたけど、『都合の良い作りもの』っぽさが随所に見られる。
ここがファンタジーな世界なのか、それとも人工的に造られた疑似的な地球なのか。そういう疑念が強まってると説明していった。
「実は過去の地球だったり?」
「どうなんだろうな。未だにさっぱりわからん……」
「4日後にはハッキリするかもしれませんよ」
「ああ、そうかもしれないな」
真相にたどり着くためにも、とにかくあと4日を生き延びたい。
そう締めくくって野営の準備に取り掛かった――。
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