第47話 諏訪魔王復活。そして共和国へ

 シャジャラの己を顧みない献身により、真司は復活した。


 まあ、受けたストレスの為、少し自棄になり、欲望のまま考えなく行動したら、そのダメージでぐったりしているシャジャラ。

 その姿を見て、俺が身内に迷惑を掛けてどうするんだと、思い至ったようである。


 どう考えても、彼奴らが悪いと責任転嫁しただけとも言えるが。


 その日は、シャジャラの介護もあった為休んだが、その翌日。


 日本政府に連絡を取り、王様アルチバルドにも確認。

 代表として、シャジャラと共に国境へと飛んだ。



 壁の向こう側で、奇妙な馬車と馬に乗った者たちがぞろぞろしている。

 向こうから、攻撃を加えて来たのに国境を越えずとどまっているのは妙だな?


 ああ、なるほど、唯一通れる道。

 そこに刻まれた深い溝が、トラップかと思っているのか?

 まあいい。声をかける。

「おい。先日、約定に沿って訪問しようとした我々を攻撃したのは、国境守備隊の判断か? それとも共和国側の総意か? 返答やいかに」


 そう言って声をかけると、やっと気が付いたらしい。

 慌てふためているが、えらそうなおっさんが出て来た。

「何を言っている。わが国として力を見せお前たちを従える。わざわざ返答を聞きに2人で来るとはな。屍をさらせば、ほかの国たちも理解できるだろう」


 俺の頭の横には、アクションカメラが付いている。

 その映像は、衛星無線で日本側でも見ている。


 その日、初めて他国に対して防衛のため敵基地攻撃が実施された。

 目標は、主となる町の領主の館。


「よし今の言葉で、我ら3国に対する宣戦布告と理解する。この会話は記録されている。お前たちは用済みだ」

 空から降る雷と共に、歩みを進めて壁の高さを、高さ幅共に10mに変更した。


 扉は、共和国側にセラミックス。次にステンレス。

 そして、本体は炭素繊維と樹脂で作られた複合材で、ハニカム構造を採用した。

 幅が10mあるので2枚つける。

 俺の国の側には階段と荷揚げ用スロープを付ける。

 こんな物かな?


 そんな作業をしている頭上を、幾本ものミサイルが飛んで行く。

 今飛んで行ったミサイルは、魔導推進式。

 高価なミサイルを、ばらまくのはもったいないので開発した。

 ラジコン飛行機にランチャー用の炸薬を詰め込み、巡航ミサイル的に飛んで行く。と、言っても一機当たり目標価格30万円位。

 筐体は、笑えることに塩ビ管だ。

 推進器は、うちが提供した魔道具。

 ジェットエンジンを参考に造った風魔法と火魔法併用推進器。目標の200m手前だけ、ロケット燃料で加速する。


 まずは、敵の防衛能力をそぎ落とす作戦。

 力を見せ、段階ごとに降伏を勧告する。

 

 前回の会談やシウダー王国の常識を聴取して決めた方針。

 まずは、実際に力を見せる事が必要である。


 情報を与えても、知らないものは理解できないからな。自分たちの持っている力が大したことが無いとわからせる。

 それが最重要だ。


 いま、日本側のオペレーションルームでは、シウダー王アルチバルドも実際の状況を見ている。

 衛星や偵察用ドローンにより送られてくる敵の状態。

 設置されている魔道具を解析して、ターゲットとして登録されると自動的にマッピングされ目標に対してミサイルが飛んで行く。

 きっとアルチバルド王は、目を回しているだろう。



 少し時は戻り、共和国側。

「報告します。国境守備隊消滅をしていました。調査隊から魔導通信が入りました」

「消滅? 進軍したのではないのか?」

「それなら、連絡並びに兵站の申請要員が居るはずです。誰も居ません」

「あっ。誰か来たようです。容姿から判断すると諏訪王のようです。先日の攻撃について問われているようです。守備隊の独断か、わが国の総意かと」

「ぬるいことだな。そんなもの総意に決まっているじゃないか。構わん攻撃して吊るしておけ。他の2国への意思表示にもなる」

「はっ。攻撃せよ。吊るせとの命令だ」


「通信途絶しました」

「新型なのにな。壊れたか? もう一台持っているはずだ。確認しろ」

「反応ありません」

「なっ。確認に向かわせろ。一体何が起こっている?」


「報告します。今国境に向かっている隊ですが、頭上。いえ、空を何かが飛んで行ったと。こちらに空飛ぶ何かが来ているようです」

「空を? おおい何か見えるか?」

「いえ今の所何も」



「あっ今何か来ました。早い」

 どーん!と音がして城壁や建物上部に設置された、対地攻撃用魔道具が次々に破壊されていく。


「敵の攻撃だ。シールドはどうなっている?」

「正常ですが。攻撃は素通りします」

 前回みたから、中和用魔道具は搭載済みだ。

 そんな事を言っている間に、どんどんと自軍の武器が消滅をしていく。

 当然それは、各町で同時に起こっている。


 日本側のオペレーションルーム。

「いやあ。素晴らしいですな。こんな遠くから敵を攻撃できるとは」

 アルチバルド王の目はキラキラだが、内心では恐怖していた。

 敵対すれば、死ぬのは自軍の兵ばかり。

 日本側は無傷だ。


 先ほど興味本位で、我が国の様子は見られますかと言って、見せてもらった画像。

 人や荷車が行き交う状況まで、見ることが出来た。

 むろん城で、兵の行きかう様子や、サボっている兵。状況がすべて気が付かぬうちに見られている。



 アルチバルド王が冷や汗を流していた頃、おれは共和国側へと足を踏み入れていた。

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