第44話 緊急会議と今後の方針
代表に案内され、かなり立派な会議室に通された。
そこには、共和国を構成する各都市の代表も集まっていた。
「初めての方もいるようなので、軽く我が共和国を説明しよう」
代表がそう発言すると、内部が暗くなりスクリーンが下がって来る。
「おお? プロジェクターが、あるのでしょうか?」
外務省の佐々木さんが、なぜか喜んでいる。
すると画が映る。
「ああスライドだ」
画面には、手書きのこの国がざっと描かれていて、いくつかの町が赤く塗られている。
「スライドと言うより、懐かしのOHPかな」
ぼそぼそと、内輪で無駄話をする。
「この、セントラリスを中心に、残り5つの町が採掘、精製、加工、錬金、装飾を管理して国が構成されている。むろんいろいろな国の方針も、6つの町を司る統領が集まり決定する共和制だ」
そう言った後、少し部屋の明かりが戻り、対面の席に座った方たちが、自己紹介を始めた。
「カイボストの町。統領ヘイモ・コイヴィストだ」
「ポーフディスタの町。統領ミッコ・コルペラ」
「カシッテヤの統領。オスカリ・パッラスマー」
「アーケミヤの町。統領。アーヴェ・ペルトラよ」
「コリステの町。ジェノヴェッファ・カルミです」
アーケミヤとコリステは女性だ。
すごく気難しそうで、二人とも眉間にしわが寄っている。
歳は分からないが40は越えている感じかな?
ほかの町も、50歳は越えていそうだ。
「よろしいでしょうか?」
シウダー王が声をかける。
「どうぞ」
「初めてお会いする方もいると思いますので、私はシウダー王国の王 アルチバルド・スサテラ・シウダーで、隣に居るのが、王妃ステファニアだ。そして、その向こうが、諏訪王国。諏訪真司殿。そして向こうが日本国外務省佐々木雄太殿だ。先ほど、代表のアトロ・ニスカヴァーラ殿には伝えたが、テラグランデ大陸ごとこの地球と言う星へ転移をしたようだ。日本国は、原住の国家である。我が国に対して接触してこられ条約を結んだ。日本国は非常に進んだ国だ」
そう言って王は、鼻息荒く紹介してくれた。
外務省の佐々木さんが、立ち上がる。
「ちょうど紹介いただきましたので。ご挨拶いたします。わが日本国といたしましては、貴国とは国境を接しておりますので、不可侵等を含め我が国の基本方針『積極的平和主義』を基本 理念として…… 両国の平 和と安定及び繁栄の確保…… この点積極 的に寄与していくことと考えています。詳細な条約内容は双方で協議の上、詰めていきたいと考えております。その辺りの条項を踏まえて、貴国にご一考いただきたく存じます」
「次は、諏訪王国諏訪殿」
促されて立ち上がる。
「ああ。うちは基本的には手を出してこなければ、手を出さん。だが危害を及ぼすような馬鹿は潰す」
そう言って、ざらざらと魔道具の破片を取り出す。
「これはこの大陸の中央にある、湖の底に沈んでいたものだ。何に使うものかは知らんが、これのおかげで魔王を封じていた魔道具が停止していた。この事実により、お前たちは世界を危険にさらした。心に刻んでおけ」
「何の証拠があって、そんなことを言う」
まあいうわな。ヘイモ・コイヴィストのおっさんが叫んでいる。
「シャジャラ」
「はい。あなたたち、入っていらっしゃい」
シャジャラが声をかけると、男たちが3人入って来てマントを取る。
「こいつらは、現場を守っていた兵たちだ。何をしていたか説明しろ」
「私は、セトプレコウグニアス特殊兵団偵察部上級兵長スレヴィ・ポルッカです。我が国の魔力濃縮装置暴走事件現場に、見たことのない人型のモンスターが居た為。監視を行っておりました」
やり切ったと言う感じで、シャジャラを見つめている兵長殿。
「聞いた通りだ。物騒な言葉がいくつか出たな。魔力濃縮装置暴走事件現場とはなんだ? 多分そこに居たモンスターと言うのは、俺の部下の事だろう。まあいい。失礼な言葉はいまは流そう。それとだな、お前たち。シウダー王国に内乱を起こそうと計画して、失敗したな。この2点回答してくれ」
ぐっ、どうする。知らぬ存ぜぬと言っても通用しないだろう。あの奇妙な生き物が諏訪王国の手の物だったとは。そう言えば、シャジャラと言う女。額に角がある。
伝承の魔族ではないのか? 時間が欲しい。
「調査を行う。少し時間が欲しい」
「よかろう。すいません、佐々木さん。条約の締結までに大体どのくらいの期間を擁するんですか?」
「二国間条約なら、根回しが済んでいれば数週間とか、ダメなら数年かかります」
「そんじゃあまあ、一月期間を空けましょうか?」
「そうですね」
そう決めて、共和国を向き宣言する。
「締結する条約骨子と、先ほどの事実調査。1月やるから準備しろ。なお、大陸中央部一つ目から二つ目の山脈の間。お前たちが策略を巡らせたところは、シウダー王国から、わが王国がもらい受けた。気をつけろ。それに対する取り決めも考えておけ」
そう宣言しながら、いつものように軽く威圧する。
まあ、ある程度言いたいことは言ったし、種は撒いたから帰ろう。
3国が、ヘリで帰った後。
「あの諏訪王国とは何者だ? 部下はことごとく普通の人間ではない。伝承の魔族にそっくりだ」
「まさか、魔道具の暴走で魔王が蘇って、混乱の最中、いけしゃあしゃあと転移国家のふりをしているのではなくて?」
「まさか。いや、それなら辻褄が合うか」
「どうする? 一戦してみるか? あの日本国が使っている空飛ぶ魔道具も、あれだけ遅ければサンダー系の武器で落とせよう」
「そうだな。諏訪め。あの態度。我らを見下しているのが鼻につく。今度奴らが来るまでに準備をしろ」
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